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2007年9月

2007年9月30日 (日)

歳重ねても変わり無きリビドーの誉れ

知性高き男女は中性化する。

単に妄言かもしれん。だがこの『命題』みたいなもんは過去より言われてきた。最近はさらに知的云々に関わらず、男女のロールモデルはあいまいになってきた。

それにはネットの普及も影響してるだろう。

ネットの匿名性により、本人の素性を隠したまま、抑圧されてきた自我を抑制なく肥大化するなんて芸当を、誰でも簡単にできるようになった。演じる、なりきる、なりすます。その「実験」を通して自分の内面にも無くて七癖、「世界に一つだけの花」的に個性豊か、ぶっちゃけて言えば人並みにヘンなトコありであることが実感され受け入れ許せるようになったから。

かくて自他ともに多様性をあるがままに容認するように、てか。

この限りなく軽い小説も、いわばもう一つの電車男。根っこはアキバ系といってよい。しかしアキバ系という言葉に含まれている棘のようなものが、すでに抜け落ち、友情と愛情とほんの少しのリスペクトが作品から感じられるのである。

REVERSE Book REVERSE

著者:石田 衣良
販売元:中央公論新社
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最近の文壇では腐女子も闊歩してるようで、あいまいな性別というのは美味しいテーマとして発展途上にあるのだろう。あまり露骨にならず、気持ち悪いコアな部分は触れずに、サラリと薄味上品にそういうニュアンスを取り入れるのは、さすがに当代随一の流行作家の仕事っぷり。

ノーマルな人でも、オトコが女の中の男的なトコに魅かれ、オンナが男の中の女性的な面に引かれる、これは過去より指摘されてきた現象。最後まで読んで、ああ、そういう温故知新なトコも意識したツクリだったんだねと、

想定外の「深み」に、まいったよ、おじさん一本取られたよと。

だけど現実は創作ほどには甘くない。探偵ファイルというサイトで読んだのだが、危機に瀕した夫婦がネットそれぞれ相手をみつけて相談してたケースでは、なんという運命の悪戯、リアルに会ってみたら、実は夫であり妻その人であった。結局その夫婦は離婚したという。ネットの虚構がばれてもハッピーエンド可、なんてのは都市伝説かもな。

あれ、ところでそういえば、石田衣良さんも結構なおじさんの歳のはず。エイジレスだ不老長寿だとくれば、妖あるいは魑魅魍魎の類、いや、しかし70歳を超えて鈍感力の淳一先生もさらにお達者という現実をみるにつけ、アンチエイジングはヒトエに本人次第、心の持ちようなのですなと、思い知らされた次第である。

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2007年9月29日 (土)

通貨・戦争・利権、誰でも命は惜しい

ダイヤモンドが人気だそうである。

純金インゴットだと1億円運ぶのに40kgぐらいの大荷物になるのだけど、ダイヤモンドなら楽勝。ちょっとポケットに入れて、危機的状況からそのまま南へ北へ海外へと避難できる。Fiat Money(兌換できない要するに場合によっては紙屑になるお金ね)のおっかない話を聞いちゃうと、なにかブツに変えて持ってなきゃいかんのだなとそわそわはしてくるのだが。

もっとも、自分含む大多数の庶民派は心配の必要無しかな。失うものがあまり無いというのは残念というより、精神衛生上よろしいことこの上なしとポジティブに解釈すべし。

ドル覇権の崩壊―静かに恐慌化する世界 Book ドル覇権の崩壊―静かに恐慌化する世界

著者:副島 隆彦
販売元:徳間書店
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あんたの国もお金ぎょーさん印刷して支払いにあててんだからさ、うちの国がそれをやってどこが悪いちゅうんや。某国スーパーノート(ニセ札ね)製造チームなら、そう言いたいとこだろう。その札束が一斉に使われて起こる金融危機、なんて話もあったけど、ご本家がマス・プロダクションしてこっそり使ってその総量非公開なんて話じゃ、そりゃ時間の問題で破綻に至る可能性大と思われてもいたしかたなし。

詳細を述べるのが躊躇されるが、ガクガクブルブルの世界の現実が本書に垣間見える。

ええと、わが国は技術しかありません。攻めて来ても皆、ポケットにダイヤ(?)突っ込んで海外に避難しちゃいます。天然資源もありません。軍事戦略的に意味の無い、ただの島国です。だから、領土的野心をもつのは得策ではありません。熟考下さい。>>某国どの

ところで副島さんはあの船井幸雄さんとご懇意ということで、この本にも、もしかしたら船井さんのあの『2012年』にかかわるエトセトラな世界の片鱗を感じ取り、心して読むべきであったのだろうかと、一抹の不安、そして逡巡ひとしきり。

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2007年9月28日 (金)

迷ったときに還ってくる成功哲学の原点

いつか読まなきゃと思っていた成功哲学のバイブル『思考は現実化する』(原題: Think and Grow Rich)。結構分厚いこともあるのだが、読んでみてそこに何も発見できなかったらどうしようとちょっと怖くて、読むのを後送りにしていた。

成功しない原因となる『誤った行動』をこんなトコでもやってたとはネ。

今日読んでみて、やはりというか、これはHOWについて書かれた本であって、これだけで何かすごい黄金色の夢みたいなもんが始まるわけではない。そのHOWだって、すでに多くの継承者達によってネタは拝借され、新しいものなんて、もうあまり残っていない。恐れていたとおり、新鮮な驚きなんてなかったのかといえば、、、。

【携帯版】思考は現実化する Book 【携帯版】思考は現実化する

著者:ナポレオン・ヒル,田中 孝顕
販売元:きこ書房
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神は細部に宿る。成功法則の基本部分は、既に類書で紹介された内容といって間違いないのだが、傍証を与えるエピソードなど、その筆致には興奮すら覚える、さすがバイブル、圧倒的な説得力、やはりMUSTの書、読んで損などあろうはずも無かったわい。

Think and Grow Rich: The Landmark Bestseller--Now Revised and Updated for the 21st Century
原書

特に後半、そして終盤。いささか厳しい口調のアドバイスが、はっきりと、頭の中に刻み込まれた。

本書はHOWの書で、自分で考えなくてはならないのは、WHATについてである。具体的には、人生の明確な目標というやつだ。適切な目標の選び方というのなら教えてくれるが、目標は人それぞれ、個人の全人生を反映したものとなるはずで、自分以外で決められるわけがない。

目標設定の良し悪しで、結果の成否は半分以上決まる、そんなことを他の成功哲学書で読んだ記憶が。コツの不在となれば失敗も繰り返すわな。HOWに定石があっても、WHATに王道が無いのだ。

ばっちり目標設定できるまで、何度も失敗すんだろうけど、それでも鈍感力でぶっちぎれ。あきらめずにいれば、数撃ちゃ当たる確率論。いつかはゴールに至る、かも。諦めれば確実にそこで、はいっそれま~で~よ。♪これっでおっしまいかっしまっしむすめぇ~♪となる。

肩の荷が下りる、一気に楽になる、そういう言い方もある。

書かれた時代背景もあって、今となっては迷信の香り漂うトコも無いわけではない。だけど、考えてみりゃご本家のバイブルだって、現代のサイエンスの解釈に自分で翻訳して置き換えて読み進むなんてこともあるだろうさ。じゃなきゃ、原理主義者なんて有難くないお名前を頂戴することになる。

宗教じゃないんだから、時代に合わせて変化して当然。

いや、ある種の宗教かもしれない、、、。

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美徳の国富論

外形課税というのが無い状態だと、赤字になっちまった年度の税金は、大きい会社も小さい会社も超微細木っ端企業も同じ。そうなってくると相対的に規模の小さいほうがよりキビスィー状況となるのは自明の理。だけど、どこの会社も弱音を吐かずに払っている。

ここらへんがもしかしたら、小さい事業に対する配慮なんて本気でする気なんて全然ないんだよおと、本音が出ているようなもんかもしれないなあと感じる日もあるのだ。

石原さんのメルマガじゃないけど、本当に、小さい会社のままじゃだめなんです、な。

国際派ベンチャー・キャピタリストの原丈人氏による『21世紀の国富論』はそのタイトルに相応しい高い視点から書かれたものと感じたが、主なテーマがITでベンチャーとなると、またか、という印象も禁じえないし、内容も多岐に渡るためにそれぞれ断片的で、日曜朝のテレビの『御意見番』御長老様達による放談めいた、なにやら虚しい空気も漂うような、いやそれも単に気のせいのような。

『美しい国』という某宰相の考え方があった。『美徳の経営』という野中郁次郎先生の著作もある。この国は美徳を思い出す必要があると思う。国の富と言うなら『美徳の国富論』たるべきだと考える。

21世紀の国富論 Book 21世紀の国富論

著者:原 丈人
販売元:平凡社
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わが国の戦後復興でベンチャーは大きな役割を果たしましたよ、ソニーやホンダを見てみんさい、と言われる。だけど、小さいまんまのソニーやホンダが林立して、今の日本に至ったのかというと、それはきっと違う世界になっていただろう。

じゃあ、今後の日本ではどうか。ベンチャーに大きな期待を本気で寄せている人は、どれほどいるのかなあ。懐疑的になってくる。国富論と、アダム・スミスの名著を彷彿とさせるタイトルで、スタートアップ期のベンチャーを論じるというのなら、それはあるいは誇大孟宗竹かも。

ベンチャーも大成功して大きくなって存在感を誇るやつが稀に現れるから期待できるのであって、小さいのばっかし雨後の筍状態のままというのが理想的なありかたでは無いし、大きくなるのに数年以上の時間がかかるわけだから、ベンチャーの飛躍を待つより、既存大企業のリノベーションのほうが、国富論という目的からは現実的か。

成功するベンチャーは、放っておいても必ず育つ、ような気がする。

邪魔するのは駄目。無用な妨害する奴を引き離しとく施策の必要はあるけど、国民の懐を痛めるような『優遇策』みたいなのがこれまで本当にベンチャーの育成に役立ち国の富に貢献してきたかというと、ええと、いかがなもんなんでしょうかな。

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2007年9月27日 (木)

読めば銀座が恋しくなる豪華な仕掛け

ますい志保さんの書かれる本は、読めばいつも何かしら気づかされることがある。

下世話な言い方をすれば、これら著作はふたご屋さんの営業ツールには違いないのだろうけど、本を営業ツールにできてしまうような超知的なママというのも夜の銀座史始まって以来の快挙、貴重な存在である。

12の口癖 成功者たちの幸運を呼び込む言葉 Book 12の口癖 成功者たちの幸運を呼び込む言葉

著者:ますい 志保
販売元:講談社
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ちなみに、手紙というレベルならば、江戸時代、吉原の花魁がそういうものをしたためる教養と習慣をもっていたことが、先日読んだ松井今朝子の直木賞受賞作『吉原手引草』にも書かれている。かたやワン・トゥー・ワン・マーケティング、かたや大量破壊兵器、じゃなかった、マス・マーケティングのツール。提供するサービスからなにから全然違う代物との印象だが、仕掛けの規模の差こそあれ、狙いはおんなじ。

さて、閑話休題。

本作で話題にのぼる12種類の口癖のうち、7番目と8番目のセリフが印象に残った。

7番目の『一から教えてください』は、ふたご屋の成功の秘訣についてである。すべてお客様から教わったという。顧客の声に耳を傾けて成功した企業は少なくないが、殿様商売、いや銀座の場合は姫様商売か、そういう高飛車な楽しませてやるぞの顧客にとっては卑屈なエクスペリエンスにすらなるやもしれぬハイソな銀座で、謙虚で正直で率直な態度はまこと立派。ますいママだから出来る芸、ということに違いない。

ただ、楽しみ方に選択肢が増えた今、夜の銀座がそんなに面白い場所なのか。成功したら銀座って発想が、まったく理解できない。楽しみ方を知らない野暮天と言われればそれまでだが。

成功してはじめて扉を開けるより、新入社員を連れてって、こういう世界もあるぜ、という風に使うのは、いいかもしれない。ああいう世界が好きな人には堪らんでしょ。また行きたいと努力するから吉。どうしても行きたくてグレーなマネーに手を出しましたじゃ困るけど。

8番目の『ツイてるなあ』は、なぜ銀座なのか、その秘密でもあろう。気持ちをポジティブに保つ。銀座で遊ぶなんてのは、まさにそれが目的といっていい。とりあえず形から、この場合は気持ちから、入る。成功してるような気になって、そのうち現実のほうが追いついてくる。成功したから銀座じゃなくて、さらに成功したいから銀座で遊ぶのだ。

でも、俺はいいや。

成功したら、むしろ、難攻不落の聖地オールドコースを地元の見知らぬおっさん達と一緒に回るとか、そっちのアウトドア方面で遊ぶほうが、性に合っとる。日韓ワールドカップのスウェーデン対ナイジェリアを神戸で見たときも、町を闊歩するスウェーデン・サポーターを羨ましいなあと思ったし。仕事なんて1ヶ月ぐらいホカしてるんだろうけど、見た限り豊かな感じの人達で、時間が自由になる贅沢な生き方ができているのだろう。時間と金は、こうやって使いたいものだと、自分は考えた。

銀座の有名ママさんの目にかなう人達というのは、志をもつ人のごく一部、どちらかというとオールドエコノミーのカルチャーに片足(以上)突っ込んでいる人が大多数だろう。例えば、環境主義者のイヴォン・シュイナードが夜の街を徘徊する趣味をもっているとは考えにくい。成功者の定義ってのが、銀座のママのビジョンではちょっとオブソリートになってんじゃないのかいなと、今となっては感じなくも無い。

それでも、銀座に通える各位のご身分とふたご屋さんのご繁盛は、結構毛だらけ猫灰だらけ。ニッポンの経済が当分は安泰という証左。まさに、ご同慶の至りでございます。

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2007年9月26日 (水)

数式無くても物理はキビすぃ~っ!

ブルーバックスで相対論とか量子論の解説をわくわくしながら読んでた物理キッズも、世に出て生業につき、忙しくなって、物理学の進歩から取り残される。

ああ、紅顔の理系少年、いまいずこ。

そして今、ジョディ・フォスター似の物理学会のアイドル、リサ・ランドールが一般向けに送り出す、数式の無い物理学の解説書。しかし読んでみると結構ハードで、晩酌のお供にはまったく適していない。

いや、しらふでマジで読んだって、わからんもんはわからんのだから、ちょっと一杯で気が大きくなってるときのほうが気分爽快に『右から左へ受け流す』ことができるかもしれない。

ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く Book ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く

著者:リサ・ランドール
販売元:日本放送出版協会
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600頁超の邦訳に比べると原書はなんだかすごーくコンパクトな仕上がり。英語でのテクニカルタームも知りたいとこだし、この本はやっぱり、原書で読めるなら原書で読んだほうがいいように思う。各章の始めには有名シンガーやら伝説のロックバンドやらの歌詞が引用してあって、しかしそういうウィットなるものは概して翻訳のフィルターで落ちてしまう宿命。邦訳に滲み出ぬようなニュアンスを原語で理解できるかどうかはわからんが、原書のほうは2000円切ってて、2900円の邦訳よりずっとお買い得だし、軽くて鞄に入れて携帯するにも便利なのだ。

実は自分でも原書を買おうか今迷っているトコだったりする。

Warped Passages: Unraveling the Mysteries of the Universe's Hidden Dimensions
原書

難しい本論はさておいて、著者は余談のつもりだろうが、相対論による補正無くしてGPSが正しく動かない(ネット上の解説はこちら)、この事実にスゴ~く驚ろかされた。GPS衛星の高速運動による時計の遅れ補正に特殊相対論が必要で、重力でのドップラ効果のような偏差の補正に一般相対論が必要だという。誤差ったって一兆分の100で、普通は補正しようなんて思わないレベルだけど、補正しないと毎日10kmからの誤差が出るという。

ハイテクもここまで来ると凄い世界だ。それにしても、相対論を駆使するエンジニアてのも、羨ましい職種だな。

自分にゃ到底つとまらんだろうけど。

リサ・ランドールさんもロック・クライミングを楽しまれるようだけど、素人の物理ファンにとっては、この本を読みこなすのは、ちょっとした山の頂上を極めるようなもん。湘南平じゃなくて、丹沢クラスね。

いや、足開き気味に滑るくせに横倉の壁に挑もうとして、チビッって名誉もへったくれもなく撤退した日の気分を思い出した。

これをテキストにしている大学がアメリカにはあるというけど、数式の無い本は理系ではテキストになるわけないから、文系教養課程の『近代物理学史』なんてコースのためかもしれない。

確かに、現代物理学のあらましを知るというにはいい。

だけど、である。

知った気、ぐらいにしかならないかも。

大多数の人が、リサ・ランドールの学説を知る前の段階でギブ・アップしたくなること請け合い。

昔取った杵柄ぐらいじゃ歯が立たんのだ。

やさしい解説を期待するなら、若田宇宙飛行士によるインタビューをまとめた『異次元は存在する』を強~くお勧めする。あれなら、なんとかわかる、いや、わかった気になれる。

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2007年9月25日 (火)

数撃ちゃ当たる継続力

運のいい人と悪い人がいると考えるのは無理からぬことで、同じような能力で同程度の努力をしていても、結果ははなはだ異なることのほうが多い。それは確率的にそうなるだけだと、理性は教える。

確率で説明できないほどに結果に偏りが生じるというデータと対峙しない限り、運のいい人と悪い人がいるという言説を支持してはならないのだ。

運のいい人、悪い人―運を鍛える四つの法則 Book 運のいい人、悪い人―運を鍛える四つの法則

著者:リチャード ワイズマン
販売元:角川書店
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正直にいえば意外な結論を期待して読み始めたのであるが、やっぱり、気の持ちようという結論に、生き方を考え直さなくて良くてホッとしたともいえるし、少し拍子抜けしたともいえる。 The Luck Factor, Changing Your Luck, Changing Your LIfe: The Four Essential Principles
原書

だけど、近視眼的に見れば運が悪いといえることも、『人生にはタービュランスが必要』なんて考え方を加えるだけで、ちょっとヤダけどしょうがない、『右から左に受け流す』という対応が自然に取れるようになる。

長者番付常連の斉藤一人さんが、ついてるついてる、そう連呼するのも、理にかなっている。ごく最近でも、『ワタシは最高にツイている 』なんて本を出された方がいて、現在アマゾン100位以内にランクされるから立派なベストセラー。

やっぱり、その前向きな姿勢が人を呼ぶのだ、左手を挙げた招き猫みたいに。

あとは、人脈力、そして直感力。こちらは結構難しいかもしれない。それぞれのテーマで多くの本が出版されているわけだし。

※ 本書は『世界の成功哲学50の名著』で紹介されている50冊のうちの1冊である。

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縦に横に、壊れたまんま伝播する

歪んだ社会はストレスフル。

壊れたコドモは壊れたオトナを映す鏡。

誰もが多かれ少なかれココロに病んだ部分を持っている、そういう社会になってしまったのならば、無自覚のうちに、後天的に歪んだソフト情報も、親から子へ受け継がれる。

その挙動はDNAにも似ているが、ソフト情報だから横方向へも、子供から隣の子供へと伝播するうちに、気がついたときには蔓延してましたということにもなる。

困ったことに、イカレたオトナから他所様の子供へ伝播というパターンまである。

歪みのソフト情報の連鎖をどこかで断ち切らなくてはならない。

それが教育の機能のひとつであったはず。

期待に反して教育は荒廃する。

コドモは声も出せずに傷つき、社会の未来は密かに失われてゆく。

あなたの呼吸が止まるまで Book あなたの呼吸が止まるまで

著者:島本 理生
販売元:新潮社
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本作は、小学生の娘の日記なのである。体裁は。

それも、暗くて、辛い告白。

お父さんなら涙してしまう。娘の日記を読んでちゃいかんが。

前作『大きな熊が来る前に、おやすみ。』でも本作『あなたの呼吸が止まるまで』でも、女児は身近なイカレたオトコの性的虐待に苦しむ。

病んだ世相なればこその作風なのだろう。

心の時代、スピリチュアルの21世紀、すべて『今、なんかみんな変だよ』ということを裏返しに表現したコトバに過ぎないのか。

この作、男にはつらいよ。

諸悪の根源はオトコにあると言われている気がしてくる。亡きマルセル・マルソーも思い出させる孤高の父親、舞台芸術に入れあげる愛すべきダメ親父のほうに自分を映してしまう世代としては、獅子身中の虫もおるわで、あまりに救いの無い展開となってしまうのだ。

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2007年9月24日 (月)

地震・津波・火災・液状化の地獄絵図、茅ヶ崎市民は助け合えるだろうか

湘南が過去に津波でやられたという史実を聞いたことがなかったのだが、無いわけがないじゃん。関東大震災では熱海に13mの津波がやってきて被害甚大だったそうだ。東京の被害ばかりクローズアップされて、周辺市域の史実は風化する。

海の町なら津波の危険は必ずある。そして相模湾の中心に震源地があったりしたら、確実にアウトだ。波を大きく育てる洗面器形状。さらに、そこには実際に地震の巣がある。

来週月曜日(2007年10月1日)から緊急地震速報が一般向けに開始される。この速報、茅ヶ崎市からは『防災茅ヶ崎』という防災行政用無線放送(最終的には市内各地の高所に配置された拡声スピーカーによる)に乗せて報じられると思うのだが、いつもののんびりしたペースで放送原稿が読まれるようだと、ピンポンとやってるうちに大揺れが始まる。

だからおそらく、一瞬でわかる専用の警報音を使うのだろう。だけど、どんな音か知らないぞ、そういうのは私だけではなかろう。問題はそこにある。

予想される東海地震の被害が及ぶ東端にあるとされ、一方、東京直下型だってひとたび起これば、ここ茅ヶ崎市も被害は免れない。2つの破壊のエネルギー「場」が重なる、ベン図でいうA∩B領域のような、麻雀でいう大三元・字一色・ダブル役満のような、コワさ倍増の茅ヶ崎。

断層帯の真上ではないが、国府津-松田-神縄だ、北伊豆だ、伊勢原だ、三浦半島だ、これでもかというぐらいに多くの断層群に囲まれてるではないか。

だけど本当に怖いのは津波より、液状化かもしれない。

平成関東大震災--いつか来るとは知っていたが今日来るとは思わなかった-- Book 平成関東大震災--いつか来るとは知っていたが今日来るとは思わなかった--

著者:福井 晴敏
販売元:講談社
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本書によれば、相模湾から湘南のど真ん中を『相模トラフ』なるプレートの接合面が横たわっている。太平洋・北アメリカ・ユーラシア・フィリピン海という4つのプレートが関わる地殻変動で、こんな複雑なのはパナマ地峡とここ相模トラフだけで地球に2つしかない、世界に冠たる地震銀座なのだ、なんて威張ってどうする。

茅ヶ崎も最近はかわいい戸建てラッシュ、3階建てがお約束。見かけほどヤワなこともないと思うし、耐震偽装も無いとは思うのだが。うちも人のこと言えないけど、茅ヶ崎も御多分に洩れず高齢化で古い家屋が結構多くて、ひとたび地震がおこると、東京下町と同じモクミツ(木造密集地域)、茅ヶ崎駅周辺が阿鼻叫喚の火焔地獄に、そんな悪夢にならないことを祈るばかり。

因みに、本作『平成関東大震災』は、半分が、地震サバイバルマニュアルのようになっている。茅ヶ崎市でも防災用に、この部分をパクッて茅ヶ崎市用に編集して、『平成南関東大震災』と称して配布したり、図書館や公民館に常備したらどうか。東京で一番安全なのは都庁だそうだが、茅ヶ崎の場合は老朽化で市役所は危険かも。茅ヶ崎には安全な場所なんか無いです、そんな結論なら聞きたくも無いが。

神田の人達は、助け合って、人的物的被害を最小限にとどめることができた、そのように本書『平成関東大震災』の『解説男』が語る。

助け合える街が一番安全ということ。

『茅ヶ崎都民』化が進む市民にそうした連帯感があるかどうか微妙なところ。地震で壊れるのは人のココロ。だが、それでもここらへんのヒントは、この本のプレゼントしてくれる『僅かな救い』であろうか。

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2007年9月23日 (日)

成功哲学・和魂洋才・サジ加減

ビジネス書の背後には理論もそれを支えるアカデミズムもある。

体系化が進んでいるから、とっかかりを探そうとすれば、最速一本道を案内するガイドブックのようなものも整備されていて、アマゾンの書評あたりを手掛かりに本を選んでもそんなに大失敗しそうもない。大御所の定番が存在し、基礎的なところでは教わるべき内容も標準化が進んでいるように見える。

そして大学にはMBAコースも、経済学部や経営学部もある。このように教育・研究機関が充実するとともに、議論・協力・研鑽・合意形成の場としての学会も組織化されている。

成功哲学はといえば、体系化は今後に任されているように見える。

じゃあ、俺が体系化するぜ、そういう話をしようというのではない。私が勉強するには、どうやて合理的に吸収してゆくことができるのか、そういうテーマに敏感になっている、ということだ。

成功哲学では、価値観と世界観が存在する。しかしそれらはえてして属人的。だれそれさんの教え、という形をとることが多い。新興宗教はグルを中心にグルの教えを守ることで組織の求心力が形成されるが、成功哲学のコミュニティも似たところがあるのではないか。

で、今回読んだ本は、それなりに歴史がまとめられ、思想的な流れが把握しやすい。体系化して説明しようとの意気込みが感じられる。

[図解]成功哲学ノート 実業家・理論家の巨星27人に学ぶ成功の秘訣 Book [図解]成功哲学ノート 実業家・理論家の巨星27人に学ぶ成功の秘訣

著者:池田 光
販売元:PHP研究所
Amazon.co.jpで詳細を確認する

不勉強を恥ずべきながら、ニューソートという分類も、本書で初めて知った。さらに本書では、わが国の先人の思想について、多くのページを割いている。洋モノを輸入して妄信したくなる誘惑もあるのだが、日本の風土と歴史に親和性ある考え方というのもあるだろうし、知っておいて損はないはず。深入りを躊躇するぶっ飛んだ考え方もあったりするのだが。

類書としての『世界の成功哲学50の名著』では言うまでもなく欧米中心で、日本発の考え方なんて全く出てこない。日本人が勉強するのに『50の名著』だけというのでは、片手落ち、それも本のせいじゃなくて、本の選び方のほうに問題がある。欧米の成功哲学を一通り俯瞰したいというのなら、『50の名著』は最適だと思うのだが。

いずれにせよ一冊に頼るのは危険だ。

本書も『属人的』アプローチには違いない。なにしろ、一人の著名人に数ページの説明という体裁なのだ。しかし、『本』を紹介するという非自己完結型の内容ではなく、直接に人と思想をまとめてくれているところが、努力をオシム不届き千万の怠け者には有難い。

どんどん出版される新刊書を無節操にバクバク食い散らかすのも実践的には悪くない作戦だが、こういう本を根拠にクラシックを適宜選択して吸収してゆくのが実り多いに違いない。本が溢れる現代、読まなくて済む本の見分けがつけば、レバレッジ・リーディング的な日々の読書習慣へまた一歩近づくことができるというものだ。

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2007年9月22日 (土)

短かいから笑って許せることもある

冒頭の石田衣良氏の作品でギャフンッと放り出してしまった本だが、気を取り直し、とりあえず三崎亜記さんの作品だけでも、『Enak!』だけ読んでみれば、これはこれで結構楽しい。

オトナの片思い Book オトナの片思い

著者:石田 衣良
販売元:角川春樹事務所
Amazon.co.jpで詳細を確認する

影が無いって言えばそりゃこの世のモンじゃないてことだが、さらに漂泊の民となると、こりゃもうサンカと失われた町を合体したような、イカニモの三崎亜記空間。結末がハッピーエンド風で、よかったよかった。ああ、影無しって、しがらみを捨てたボヘミアンって凝った喩えだったのかな、と鈍感力炸裂。

タイトルが一番良くできてる本という嬉しくなっちゃう表現をされてる方もいらっしゃいますが、ワタクシ風にいえば、タイトルは2番目によくできていると、いやまて、結局2作しか読まずにギブアップだから、意見できる立場にはなかったぜ。

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2007年9月21日 (金)

玉砕しない生真面目起業法

新技術で起業しようとする場合、市場に広く受け入れられまでの死の谷をどうやって生き延びるかが鍵となることは、色々な人が指摘してきた。ジェフリー・ムーアのキャズム論がすごいところは、それを克服する方法を示していること、さらに付帯するテクノロジ・ライフサイクル・モデルがシンプルでわかりやすく適切であるということだろう。

例えば、ライフサイクルの5段階とそれぞれの間のギャップと巨大なギャップたるキャズム1箇所で、顧客の購買心理が違うと看破する。いや、購買心理が違うからこそ、それぞれセグメントを別にして作戦を立てなくてはならないのだ。

ただ、これがテクノロジ・ベンチャーの勝ち残りの生態系を網羅しているかといえば、そうではないのではないか。

マイクロソフトにはキャズムが無かったという。例外中の例外だそうだが、成功したテクノロジ・ベンチャーを分析すると、実質的にキャズム無しのケースがかなりの率で含まれているのではないかとも疑いたくなってくる。

正攻法で持久戦、正面突破で勝つときはボーリングレーンのヘッドピン直撃ストライク状態、しかし負ければガーター壊滅のパターン。ちょっと生真面目すぎじゃなかとね。

キャズム Book キャズム

著者:ジェフリー・ムーア
販売元:翔泳社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

生真面目といえば、最後には起業時に活躍する開発者やマーケッターと市場に受け入れられてから必要となる人材は違う、なんてゾーッとするような真実にも触れている。それでも功労者を適切に処遇する手段について提案しているなんて、なんか、ジェフリー・ムーアさんの優しさが伝わってくるようだ。 Crossing the Chasm: Marketing and Selling High-Tech Products to Mainstream Customers (Harper Business Essentials)
原書

だが、蛇の道は蛇。

裏道は必ずある。

そもそもキャズムを作らない戦略、マイクロソフトみたいに「うまくやる」逃げ道。そういうアングルからアングラでアンゼンな起業、確実なビジネスの始め方について語る本てのがあってもいいのじゃないかと。

学校ならコネ入学もある。会社だって、親の経営する大企業の隠れ子会社としてスタートというパターンも、世に跋扈していると思うし。これも安全起業のひとつ。

だってそりゃ、千人に数人しか成功しないなんて世界に、徒手空拳で優秀な奴が突撃して玉砕するなんて、到底ありえん構図だし。

安全確保こそが最大のインセンティブ、かも。

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2007年9月20日 (木)

ホンモノ以上に精巧なニセモノ

元NHKワシントン支局長にてインテリジェンスの専門家、手嶋龍一氏の書いたニセ札を印刷する国家の陰謀の話は、限りなく真実に近い創作というが、フィクションに偽装してリークされた真実だったような。だが、今回の著者は、ニセ札かどうか判別するマシンのメーカーの社長さん。いわば、事件のインサイダー。ワクワクするような裏話が、ここまで喋っていいんかい、アカララデ赤裸々に語られてしまう。

シャチョーさんは、新種のニセ札を探してタイへ。アブナいお姉さんがいっぱいいる場所で、アヤシげな男が精巧なニセ百ドル札4枚を200ドルで売りに来たっていう。

普通の人には区別できないから普通に400ドルとして使えばいいものを。さらに日本にはニセドル札を後生大事に額に入れて飾っとくような人もいるそうで、日本で売れば、確実にプレミアム。法的にはグレーというよりもってるだけでブラックだそうだが。

アナタの財布も危ない!ニセ札の恐怖 (扶桑社新書 15) Book アナタの財布も危ない!ニセ札の恐怖 (扶桑社新書 15)

著者:松村 喜秀
販売元:扶桑社
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ニセドル札製造はどこぞの国のマフィアのドル箱(?)ビジネスであるだけでなく、テロのツールとして機能するとの指摘にはビックリする。さらに、正規のドル札とニセ札の間の差よりも、正規ドルの印刷所が違うことによる品質の差のほうが大きい、今とりあえずそこまで行って無くても、いずれそういう状況になることだろう。

国家てのは困ったらお札を印刷すればいいんだから楽だよな、そう誤解してたけど、国家の信用が落ちると紙屑になってしまうのだね。インドネシアのメガワティー派の、お札に貼るシール作戦、もうほとんど反則というか、選挙で負けたらヤバかっただろう、大勝負にはとんでもないアイデアが出てくるものだ。

驚ろかされ、楽しませていただいた。

それにしても、やっぱりこういう超精密の世界では、日本の技術は存在感が大きいのだなと、安心した次第。

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冬に冷やし中華もワルくないけどな

冷やし中華は年がら年中食べたいのに、なぜ夏しかないのか。

そう感じる自分は、すでに季節感を喪失した世代。

オフィスでソフトウェアを書いてますなんてインドア志向の似非都市型生活を過ごしてりゃ、今が夏か冬か感じ考える時間なんてそんなに長くはない。それが茅ヶ崎という田舎でしたなんてオチがあろうとなかろうと。

そういえば、ビールの消費量が夏も冬も平準化されてきたという。自分の最近の飲食行動を振り返ってみれば、ビールじゃないけど、冬だって夏型、シャンパンとかスパークリングワインが一番美味いと感じる。クリスマスに限った話じゃない。

季節感は消滅し、さらに夏におでん。確かに、既にコンビニのレジ横には、おでん鍋が鎮座していた。自分では食べたいと思わなかったけど。

コンビニでは、なぜ8月におでんを売り始めたのか (扶桑社新書 17) Book コンビニでは、なぜ8月におでんを売り始めたのか (扶桑社新書 17)

著者:石川 勝敏
販売元:扶桑社
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なるほど、気温の絶対値じゃなくて、気温の勾配が重要ということ。定性的だから、流通業にそれほど興味をもたない人も楽しめる。これを逆に専門的にして『定量分析実践講座―ケースで学ぶ意思決定の手法 』という本になってしまうと、ちょっと読むのが苦痛になってくる。そこまでコミットできない。もっとも、セブンイレブンの冷やし中華は『俺は20回駄目出ししたぞ』という鈴木敏文会長の言葉、ここらへんは大いに興味深く読ませてもらった。こういうエピソードを沢山並べてくれれば、定量的なところは読み飛ばして、結論だけ楽しく読めるのだが。それじゃ『定量分析』を読んだとは言いづらいが。

『定量分析』のほうは専門書で『8月おでん』は通俗書。ま、いってみれば、宇宙論におけるリサ・ランドールの『ワープする宇宙』みたいなポジションなんでしょうな、『8月おでん』のほうは。

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文化のパトロンとしての新富裕層

一人の識者が新富裕層について語れる内容は既に限界に達しているのだろう、本書の内容もどこかで読んだ内容、どちらがオリジナルかはわからないが。プレーヤーの数がまだ少ないということかもしれないし、多くの識者を食わせるほどにはマーケットとして規模を成してないということかもしれない。

日本の富裕層―お金持ちを「お得意さま」にする方法 Book 日本の富裕層―お金持ちを「お得意さま」にする方法

著者:臼井 宥文
販売元:宝島社
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この本で注目したのは2件の対談。下流社会の著作で知られる三浦展氏、そして甲南大学の森剛志氏。三浦展氏の、下流社会にポテンシャルありとの見識が頼もしい。いや、発展途上層と言い換えよう。インドも中国も、富裕層の消費が経済発展に繋がっているわけではないんじゃないかと。貧しいマス層が豊かになることで爆発的に経済発展する。日本でも成長余地は、富裕層というより、マスの発展途上層にキーがあると感じた。

だけどそんなことを言っていては新富裕層の研究にはならない。もうひとつ指摘されていた新富裕層と発展途上層の連携というか、アーティストとパトロンの関係。欧米のように富裕層が芸術へのボランタリーな貢献を行うというのが普通の習慣になってくれば、今はアーティストとして無名で貧しいんだけど、可能性のありそうなところを支援してゆく。本当にアーティストとして成功すれば、巨額のリターンも得られるだろうし、才能を見出した粋人として名声も高まる。富裕層には単なる消費を期待するのでなく、こうした文化の擁護者としてのかつての貴族のような役回りを期待したいところだ。

著者は日本をモナコ化したい、富裕層に期待するとおっしゃるのは、商売柄かもしれないが、日本の新富裕層にそういうココロザシがあるのかどうか、著者に聞きたい。拝金主義が跋扈する昨今の格差社会は日本人の精神風土に合わないのではないか。

金の奴隷とならず、金に働かせるために富裕層をめざすのはいい。チャンスが開かれた社会がいい。だけど、モナコ化を1億2千万人もヒトがいる日本がやっても意味が無い。国民全員を食わせるほど、モナコ型のビジネスはパイの大きさがあろうはずもない。一時はエコノミックアニマルと言われて経済力だけが持ち上げられた日本だが、実は国際的にリスペクトされているし、その理由は経済力そのものではないと聞く。

規模だけでいえばもはや中国やインドと勝負にもならないだろうが、国際的に比類なき存在感を確立してリスペクトを集める、そういうありかたをめざすことはできるだろう。『金持ちいじめ』なんてのも悪しき風習だが、金持ちに媚びる社会なんてのには、ニッポンをもっていってはならないと、この本を読んで強く感じた次第である。

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2007年9月19日 (水)

富裕層に向いて準富裕層で儲ける

新富裕層を本書では準富裕層と呼んで、金持ちA様×貧乏B様のように『本物』の富裕層と『準』を対比して説明するのだが、準富裕層をその成金趣味から揶揄したところが、読者も富裕層になったような気になって痛快に感じる仕掛けなのだろうが、その実、毒を含んでイヤ~な後味にもなっているような。

バブル期のホイチョイプロダクションを髣髴とさせる軽薄なノリで、断片的なコメントを集めたエッセー集で体系的な富裕層マーケティングの攻略法を得ることはできないのだが、中には鋭く核心を突くメッセージもあって、富裕層マーケティングを志す人には、この手の手引き書が潤沢で流通しているわけでもない現在、やはり一読の価値ありと感じた。

富裕層ビジネス 成功の秘訣 Book 富裕層ビジネス 成功の秘訣

著者:中谷 彰宏
販売元:ぜんにち出版
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本当の富裕層をターゲットにするには、富裕層に身を置かないと苦しい。じゃあ、自分じゃ駄目となるが、元富裕層の人をうまく巻き込むと、ビジネスが突然現実味を帯びてくる。なるほどね。

だけどやはり本当の富裕層は商売にするのが難しい。やっぱり、なんちゃってセレブ層、富裕層に憧れる層に富裕層の気分を味わえるエクスペリエンスを提供するビジネスのほうが確実に儲かりそうだ。

この本でも言っているけど、富裕層を顧客にするには、人ベース。とびきりのコンシェルジェが必要で、そんな人は簡単に育成もできなきゃ、どこかからスカウトしてくることも難しい。簡単に金になびくような奴はそもそも信用できるコンシェルジェとはならんだろうし、そんな優れたサービスマンは破格の待遇で現在の雇用主が必死に守るだろう。

だからやっぱり、狙うのは新富裕層。真の富裕層向けのサービスのフュージョンというか、トリクルダウンしたサービスを、真の富裕層向けサービスと称して売るのである。騙しているわけではない。顧客はサービスに対しては至ってハッピー、満足を感じることだろう。

富裕層は人それぞれ。皆が使っている必要はない。最近聞いた秀逸なマーケティングが、独身リング。結婚指輪じゃなくて、独身の人用の指輪なんだけど、シリアルナンバーが刻印してあって、男性用と女性用とで一致するものがただ一つだけ世界のどこかに存在する。そして、ハリウッドの映画スターが、そのうちの一つを持っている、というのが売り文句。

間違いなくセレブと同じ品物を使用することになって、セレブとただならぬ出会いにつながる可能性もある。宝くじより確率は低いかもしらんが、ゼロではないし、1万円未満と言う絶妙の値段、ちょっと高いけど面白そうなら支払える金額だ。

これを日本の会社が仕掛けたというなら絶賛ものなんだが、残念ながら北欧のほうで発案されたビジネスということを、確かFM横浜だったかの番組で紹介していた。

堅いビジネスというなら、『真』というより、『新』富裕層を狙うべきであろう。

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米国版の断ることを覚えなさい型営業

まだ顧客を十分に確保してないうちは、どんな客でも無いよりマシとどんどん食らいついてゆくのだが、ある比率で利益に結びつかないというか損失の原因となる顧客層のあることに気づく。それは顧客に問題があるのではなく、その顧客が自社のサービスに満足してないから。自社の方針ゆえに満足いただけない、というべきかもしれない。

そんなわけで、クレームになったり、振り回されるだけで双方とも不幸になる。

相性の問題なのだ。

そういう顧客からはとっとと撤退させていただいたほうが、先方にも自社にも利益になる。

そんな理屈はわかってはいるのだけど、頑張って集めてきた顧客、自分から離れるようなことはなかなか出来ないのが人情。

しかし、敢えてやるべし、というのが本書。

顧客は追いかけるな!―48時間で顧客が集まるシンクロニシティの法則 Book 顧客は追いかけるな!―48時間で顧客が集まるシンクロニシティの法則

著者:ジャン・ストリンガー,ステーシー・ホール
販売元:ダイヤモンド社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

48時間はレトリックで、オレなら3秒で売るというのと同様、そんなに簡単に『パーフェクト』な顧客は集まらない。だけど、中長期的には、相性の合わない、すなわち『パーフェクトじゃない』顧客は、双方に不利益を生むだけ。値引きなどで強引に集客したくなるけど、集めてはならないのである。

そういう客は、ベストマッチな競合他社に紹介しろと。なかなか難しい注文ではあるが、これは核心を突いている。顧客にも自社にもプラスになる玉虫色のソリューションだ。

商売に偶然性は付き物。だから商売の神様を拝みたくなるし、招き猫を飾りたくもなる。こうしたビジネスと顧客の出会いにおける、偶然性に見える必然性を、本書ではシンクロニシティという言葉で代表させている。

このシンクロニシティに注目したマーケティングを徹底し、自社の軸を揺らがぬようにすれば、顧客は向こうから引き寄せられてくるという。なにやら『思考は現実化する』とかLaw of Attractionの話を思い出すが、確かに、明確なミッション・ステートメントをもった会社というのは、本当にそれを遵守している限り、相性を顧客のほうも判断して、信頼して付き合えるものであろう。

戦略的シンクロニシティの6つの原則は以下の通り。

  1. 自分の使命に忠実になる
  2. 引き寄せたい顧客の姿を明確にする
  3. 自分のビジネスを高く評価する
  4. 競争ではなく協力を選択する
  5. 顧客に忠実で役立つ存在になる
  6. 感謝の気持ちを分かち合う

うーん、痛いところを突かれたね。3なんて、すぐ忘れてイチゲンさんにも媚びちゃう中途半端な脱サラ商人の習性。

だけど、そういうビジネス書こそ、読む価値があるのだろう。最初に読み始めたときは、顧客を選ぶとはなんと殿様商売な、なんて誤解して、放り出しちまったぜとカミングアウト。

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サイキックはつらいらしい

俺にも『千里眼』とか予知能力とか、あったらなあと、ときには思うわけである。

だけど実際にその能力を与えられた人達は、周囲の誤解というのがあって、苦しむことになるのがお定まりのパターンらしい。

うまく使うことのできない能力ならば与えられないほうがずっと幸福。それでか、サイキックな能力はたとえば悪用するような人には覚醒されないように見える。サイキックなサイコなんて、そりゃ悪夢。そうならないよう、そこに何らかの秩序が働いているということであるなら、それこそ超常的な隠された宇宙法則ということになる。

ただ、この話題は扱いが難しい。マジな目で語れば、あいつは大丈夫か、ってな話になるし、ミスター・マリックのハンドパワーや引田天引さんのイリュージョンと一緒に語っては、それこそ関係者各位からお叱りをうけそうな。

まあ、だけど、話題の本だし、読んじゃったし、黙ってるのもシャクだから、あくまで読書感想文、三連休の宿題提出みたいな感じで書くだけ書いておきますか。

そういうノリで、えいっ!

リコネクション―人を癒し、自分を癒す Book リコネクション―人を癒し、自分を癒す

著者:エリック パール
販売元:ナチュラルスピリット
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リコネクティブ・ヒーリングの創始者エリック・パール博士が書いた啓蒙書。その施術は日本でも行われている。

そのご本人、カイロプラクティシャンにしてカリスマ・ヒーラー、エリック・パール氏は、サイキックとしていかに覚醒したか。

自己紹介みたいなもんだろうけど、冒頭からかなりのボリュームを割いて、自伝らしきものが書かれている。運のいいことに、そう言っていいだろう、本格的に覚醒したのは大学生の年齢になってからのようだ。サイキックは遺伝的な形質とも考えられることがあるが、著者の場合、誕生時に母親が超常的体験をしていて、それが原因というか結果というか鶏と卵の関係だが、著者は生まれつきスペシャルな存在であったという主旨。

宗教指導者のようなオーラを醸し出す。

そんなことはないとおもうけど、もし演出だったら大成功。あざとい限りだが。

はてしかし、常人の家にサイキックは生まれるものなのか。いや、常人にもそれぞれそれなりの超常的能力が無いとはいえない。

妻が夫の浮気を感知する能力もサイキックの一種だろ。

与太話で失礼。だけど、人間は、環境によっては驚くべきパワーを発揮する。火事場の馬鹿力、なんて表現もある。窮鼠猫を咬む、というなら人間様に限った話でもない。

速読でハリーポッター最終巻600頁を47分で読む能力もサイキックだろ。

フォトリーディングなんて流行の方法論にも人間業じゃないスゴさを感じるし、記憶術てのもそう。ただこちらは脳のキャパシティの話であって、サイキックとなると、やっぱり外の世界との相互作用、特にスピリチュアルなコミュニケーション能力というニュアンスが強い。

そうですな、身近って言っちゃおかしいけど、ジェダイ騎士団伝統の、『Luke, Believe THE FORCE!』で奇跡を起す、ザ・フォースのようなもんが、サイキックのポジティブな面をうまく喩えているように思うのだが、さらに言えば、ネガティブな懸念をダークサイドという形でうまく表現しているような。

使い方を誤ると自己破壊に繋がるような性質がビルトインされていて、これが秩序をもたたす原理みたいな、そういう世界観かも。ハリウッド映画とはいえ、スターウォーズ侮りがたし。

そういえば、なんだかこの本の表紙、E.T.の指先でコミュニケートするシーンを思わせるような。原書の表紙も同じ。
しかし日本にあって、邦訳書の定価のほうが原書の価格より高いなんて、商売上手なことで。確かに翻訳費用の分だけコストが余計にかかってんだから、こちらのほうが正直な価格設定ではあるのだが。
The Reconnection: Heal Others, Heal Yourself
原書

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2007年9月18日 (火)

ザ・シークレットのルーツを探して

昨年米国でブームとなり社会現象化した『The Secret』の邦訳版『ザ・シークレット』が10月16日に角川書店から出版される。訳者は『アルケミスト』などパウロ・コエーリョ作品や多くのスピリチュアル書の訳を手がける山川紘矢氏等で、日本ではどういう印象の本として仕上がるか、今から楽しみである。

ボブ・プロクターは、この『The Secret』原書冒頭の謝辞で共著者と紹介される一人であり、最初の章『The Secret Revealed』では筆頭に名前が挙げられている。この本に底流するLaw of Attraction (誘引の法則/牽引の法則)の強力な提唱者ということであり、事実、本書『宇宙を味方にしてお金に愛される法則』でも、Law of Attractionが中心理念となっている。

宇宙を味方にしてお金に愛される法則 Book 宇宙を味方にしてお金に愛される法則

著者:ボブ・プロクター
販売元:きこ書房
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言ってることはロンダ・バーン『The Secret』と同じじゃん、確かにそうだが、原書『You were Born Rich』の最初の出版は1984年。ロンダおばさんが若き日にこの本を読んで影響を受けたことは間違いない。『You were Born Rich』を映像という形で広い層が楽しめるよう演出し、最新のマーケティング手法で売っていったのが、『The Secret』という見方も出来る。 (まずDVD、次に本、という順序だった。)

著者のボブ・プロクターは、ナポレオン・ヒルの直系の弟子にあたるそうで、ナポレオン・ヒルの次の世代がアール・ナイチンゲール、さらに次の世代が、ボブ・プロクターということだ。本書でも『思考は現実化する』の内容が踏襲されているのに加え、アール・ナイチンゲールの言葉が何度も引用される。

最近なんだかおんなじような内容の本ばっかり読んでるような気がしてるのだけど、そりゃこの手の本がネタ本として既にシャブリ尽くされているからだ、と見るのが公平だろう。

オリジナルは本書のほうなのだ。

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2007年9月17日 (月)

イノベーションを計画するスゴイ枠組み

本格的なイノベーションはセレンディピティのもたらす偶然に任せなくてはならないが、事業上意味のある改良レベルのものは、計画して投資して達成を期待できるものである。

現在の自社の事業の成長フェーズを誤り無く認識することで、有効なイノベーションの種類を列挙することができれば、それに応じて自社の取るべき先行投資戦略も考えやすくなってくる。

本書で列挙された14の類型は、考える枠組みとして活用すればとても有効であるはずと考える。

ライフサイクル イノベーション 成熟市場+コモディティ化に効く 14のイノベーション Book ライフサイクル イノベーション 成熟市場+コモディティ化に効く 14のイノベーション

著者:ジェフリー・ムーア
販売元:翔泳社
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キャズムの提唱者であって、製品と市場に関する、カテゴリー成熟化ライフサイクル、それもキャズム付きで示す。このライフサイクルの各フェーズごとに、起こりえるイノベーションを整理して下記表のように列挙する。 Dealing With Darwin: How Great Companies Innovate at Every Phase of Their Evolution
原書

この表は戦略立案をめぐらす際に、頭の中のアイデアの枝葉を整理してゆくのに、おそらくかなり役立つと感じる。

製品リーダーシップ・ゾーン顧客インティマシー・ゾーンオペレーショナル・エクセレンス・ゾーンカテゴリー再生ゾーン
  • 破壊的
    イノベーション
  • アプリケーション・
    イノベーション
  • 製品
    イノベーション
  • プラットフォーム・
    イノベーション
  • 製品ライン拡張
    イノベーション
  • 機能強化・
    イノベーション
  • マーケティング
    イノベーション
  • 顧客エクスペリエンス・
    イノベーション
  • バリュー・
    エンジニアリング・
    イノベーション
  • インテグレーション・
    イノベーション
  • プロセス・
    イノベーション
  • バリュー・
    マイグレーション・
    イノベーション
  • 自立再生
    イノベーション
  • 企業買収再生
    イノベーション
  • 収穫・撤退

それにしても新製品がコモディティ化するスピードが速い。やっと市場投入できたと喜んでたのが春で、夏にはライバル他社に真似され、秋にも中国から類似激安品が輸入される、ってな感じ。投資をどうやって回収するか、最初の花火だけじゃ全然儲からん時代になった。

だからこそ、コモディティ化するまでの時間を引っ張り、価格競争になりかけたら付加価値をくっつけてコアなコンピテンシーで優位に立つ戦いになんとかもってゆく。そのためには、この図と睨めっこして、どこに成長余地があるのか、考えることになる。

それでも、考えるきっかけが与えられただけ、ラッキーではある。そういう枠組みがなきゃ、無手勝流で暗中模索、砂漠の中をガイド無しコンパス無しで行きつ戻りつ、どうどう巡りになることは間違いない。

そしてさらに、である。

製品のライフサイクルが終わったあとに余剰人員が発生しないように、人材のリサイクル戦略、なんてのも披露してくれてて、余計なお世話と思う人もいるだろうけど、企業の研究開発部門のマネジメントに従事する人は目を通しといて損はない。

というか、読んどかなきゃ配置転換ねと、ワンマン経営者なら言うこともありそうな。ガクガクブルブル。

示唆に富む。

結論が書いてあるのではなく、考える枠組みが示されている。

あとはそれこそ、経営陣とスタッフの考えるチカラの見せドコロ。

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2007年9月16日 (日)

商学と兵法の時を超えた蜜月関係

マーケティングは戦争である、、、そうだ。

受験だって戦争だし、嫁と姑も武力衝突してるし、朝っぱらから料理の鉄人が対決する『夢の3シェフ競演』なんてのもあるから、別にマーケティングがガチンコのバトルだって言ったってそんなに不自然でもない。

だけど、出版後175年を経た『戦争論』をもちだして、著者であるプロシアの退役軍人カール・フォン・クラウゼヴィッツを史上最高のマーケティング書の著者ともちあげるのは、さすがにビックリ目も覚める。もっとも、中小企業向けの戦略として知られるランチェスターだって、もとはといえば限られた戦力で勝つための兵法。やっぱり戦争の話が元ネタだったのだ。

マーケティング戦争 全米No.1マーケターが教える、勝つための4つの戦術 Book マーケティング戦争 全米No.1マーケターが教える、勝つための4つの戦術

著者:アル・ライズ,ジャック・トラウト
販売元:翔泳社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

全米No.1マーケターと名乗っていそうなのはこの人アル・ライズの他にも、ジョセフ・シュガーマンだ、マーク・ジョイナーだ、ジェイ・レビンソンだ、ダン・ケネディだ、ずいぶんいるけど、半数は俺様は世界一と嘯くツワモノだろうし、宇宙イチと称する電波系もなかにはおいでかもしれない。
Marketing Warfare
原書

出版後20年を経て絶版せず、今年訳者も交代して新装刊。コトラー定番書のミレニアム版なんて存在を連想してああいう改訂版の一種か要するにと思うが、この新装刊を読んでみれば、まだDECを成功例として引き合いに出してるトコあたりが妖しくセピア色の光沢を放つ。

だが、読みものとして面白く、ユニークな戦略書ということは確か。そのキモは冒頭にまとめてある。表現はちょっとイジった。

  1. トップ企業は防衛戦
  2. 二番手企業は積極攻撃
  3. 弱小企業は側面攻撃
  4. 地域密着企業はゲリラ戦

ランチェスターやら、ゲリラ・マーケティングは、この4番目に相当する。ニッポンの企業の大多数が、この4番目もしくは3番目の範疇の会社だてのに、この本ときたらここらへんにあんまり気合が入ってない。1番目と2番目に相当するブランド感あふれる有名大企業の戦いに多くのページを割く。

中小企業経営に直接役立つアイデアを期待しちゃダメで、大企業の人が日々の芸の肥やしにするために、気楽に楽しく読む本ということだろう。9割方のページに写真もしくはイラストがある。センスもよさげ。マーケティング系の本は意匠で勝つ、てか。

ドラッカーやらコトラーやらMBAプロフェッサーが好みそうな規模の会社の話題であって、しかしインフォーマルで下世話でプラクティカルでアングラ臭すら漂わせるところが、本作とビジネススクールのセレブ教授の著作と違うところ。

今となっては語り部も少なきレガシーな事例が満載。マーケティングの歴史博物館。アナクロニズムに眩暈を感じるひとときというのも、偶には悪くないエクスペリエンスである。

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2007年9月15日 (土)

経営者も消耗品化する

ニッポン株式会社の頭が壊れてしまった。

ガチンコ勝負の能力を問われるポストだって言ったって、大統領じゃないんだから、集団指導体制の纏め役みたいなもんで、本当はキャビネットやらパーティ全体で責任を取るはずのもんだと思うのだが、どうもそうなってない。

頭から腐るというニッポンのフツーの会社と、見事に似ていることよ。

会社は頭から腐る―再生の修羅場で見た日本企業の課題 Book 会社は頭から腐る―再生の修羅場で見た日本企業の課題

著者:冨山 和彦
販売元:ダイヤモンド社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

企業の寿命が短くなって一人のヒトの人生より短い。一生を捧げますなんて、昔なら会社員の鑑とされるような台詞も、今や会社にとっても負担でしかないから、クタビレ加減になったらとっとと辞めてくれんかという冷血カルチャー。社員も就職はしても、就社して社畜化する手はもう無い。経営者も、ワンポイントリリーフ型。他社で抜群の実績を上げた人を高給で釣ってくるけど、長くいられる保障なんて無い。米国型そのもの。HPのフィオリーナ女史の使用前使用後をふと思い出す。

著者は『高学歴エリートが支配する大企業』なんて思っているみたいだけど、今や高学歴だろうとあっさりリストラされる時代。エクセレントカンパニーのピラミッドの頂上に到達するのは、実力も運も兼ね備え、あるいは鈍感力すら駆使する打たれ強いチャンピオン。高学歴である必要は全然無いけど、結果的に、そこまで至る人はその手の人が多いだろね。

日本の経営は、トップがカリスマでスタンドプレーばっかし、てな人もいるけど、多くは集団指導体制とか、定期的に交代するようにしていて、顔の見えにくい経営になっている会社が多いんじゃないか。それは責任の所在をあいまいにするという、日本の会社の古き良き伝統というか、今や諸悪の根源となっている特質。株主代表訴訟が怖いから、これも必然。

トップ同士のガチンコ勝負なんてのは欧米の連中に勝てるわけがないから、やっぱりニッポンはここでも集合天才で勝負したほうがいいような気がする。顔の見えない経営は、欧米的なセンスでは最悪なんだけど、欧米と対等に渡り合うためには、日本にはこの手しか無い。経営もチームプレーだ。

レイムダックを2年も置いとくシステムより、こらアカンとなったらすぐに総裁選というほうがなんぼかマシ。トップも消耗品。それはニッポン株式会社も、ニッポンの株式会社も同じ。生き残るために必要な組織の新陳代謝。水も淀めば腐る。保身のための仲良しクラブが毒を生み、すぐに体全体に流れて企業を急死させる。

過酷な時代になったもんだ。

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2007年9月14日 (金)

理論家が実践者として成功するパターン

日本でも大学の教官がベンチャーを起こすことが珍しくなくなってきた。

理論家も自説が社会にインパクトを与えることを実証したいだろうし、その果実もほどよく自分のものにしたい。発明者が報われにくい日本では、青色半導体レーザーの中村修二博士のように、企業の研究者が適正な報酬を求めて所属企業を提訴するケースが見られる。

実践の果実を求める理論家は、何もサイエンスとテクノロジの理科系の専売特許ではない。慶応大学でベンチャー企業経営論を教えていて、実際にイーアクセスを起業して上場させた千本倖生教授のケースも知られる。

今でこそ、ケン・ブランチャード氏といえば、やさしいビジネス書「1分間マネージャー」シリーズの書き手と知られるが、かつては理論家、SL理論の提唱者として知られる。部下の習熟度によってリーダーシップはスタイルを変えてゆく、というやつだ。そのS字カーブはバリエーション(例えばこちら)を見ることもあるし、直感的にわかりやすいスグレもの。

1分間セルフ・リーダーシップ Book 1分間セルフ・リーダーシップ

著者:K・ブランチャード,S・ファウラー,L・ホーキンス
販売元:ダイヤモンド社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

1分間マネージャー・シリーズの出版とセミナーで、ブランチャード社はそれなりの規模を誇るまでに成長し、ブランチャード氏はビジネスの成功者となった。 Self Leadership and the One Minute Manager
原書

アンソニー・ロビンズはじめいわゆるカリスマ・コーチは、自分自身も成功して大金持ちになって、さらに説得力を高める。ポジティブな成長ループがこうして作られる。

経営に関する理論家の実践における成功パターンが、くっきりと見えてくる。

さて、本書では、新米マネージャーが有力顧客の広告プロジェクトを任されて窮地に陥り、メンターと出会い、障害の本質に気づき、成長し、プロジェクトを成功に導くストーリー。ビジネス書のエッセンスを小説仕立てにしたもので、楽しく学ぶことができる。フィクションとはいえ、馬鹿にはできない。ありがちな状況が設定されてて、読者も自分の環境と引き合わせて考えることができる。アンケートによって、マネージャは部下のことがわかってるわけでもないことがわかる、当たり前なんだろうけど、ここらへんは、私自身もナルホドねと再発見できた点である。

ミステリアスな切れ者女性上司のロンダは、ザ・シークレットのロンダ・バーンおばちゃんの顔を思い浮かべながら読んだ。本作のメンターが、女性マジシャンで、上司とは別人ということ。主人公は彼女とともに成長してゆくこと。なんか、女難の相転じて、ハーレムの世界か。そういえば、女性2人が書いている作だった。おそらくブランチャード氏はデーンと座ってるだけ。ブランチャード社の内実を反映した構成だったりして。

1分間で読めるわけじゃないけど、ボリューム控えめ、1時間というのが適切な所要時間。その1時間のエクスペリエンスは、必読書ってほどのもんじゃないけど、なかなか密度の濃いものとなる。こういうのを社員の方が量産してくれれば、そりゃ儲かる会社になりますわな。

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2007年9月13日 (木)

『ゆるい組織』論

フラットな組織の時代である。

軍隊のように、指揮系統と階級がはっきりしている組織は、今や時代遅れであるかのようにも扱われ、敬遠されたりしている。だが、信頼性という点では、こうした階層型組織は依然として最強である。一方、フラットな組織は、クリエイティブな個人が集まってて、集団の目的もクリエイティブなアウトプットであるときに、はじめて効果を発揮する。フラットな組織が機能するためには、メンバーにある程度の自己管理能力が要求される。

なんでもかんでもフラットな組織が適切というわけではない。

IT関連では、総じて、米国シリコンバレーの企業風土がお手本になっている。自由なカルチャーという一方、日本人にはドライに過ぎる人間関係かもしれない。それでもIT系の職種では、この西海岸風のノリが職場風景の理想像となっていると考えてよいだろう。

チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術 Book チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術

著者:大橋悦夫/佐々木正悟
販売元:日本実業出版社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ハックスシリーズは、実務のノウハウを熟知した大橋悦夫氏と、心理学者の佐々木正悟氏の絶妙なコラボによって成り立つ。心理学のオフィスでの応用というだけなら今をときめくNLPの実践というテーマに埋没してしまうかもしれないし、断片的な技術を列挙しただけだと、数多のリーダーシップ本や刹那的なノウハウ本と似たり寄ったりになってしまったに違いない。

なにより、フラット組織というのはまだ歴史が浅い。

チーム内の人間関係を良好に維持し、集団としての創造性・生産性を確保し、アウトプットを最適化することがゴールである。個人の創造性についての知見は役に立つがそれがすべてではない。ヘテロな特性をもった人達の集団を動かすには、それ相応のソフト的な裏付けが必要だろう。

本書で紹介されるのは、集団としてのマナーあり、会議術、オンラインサービスの利用まで、実に多様。最後には「リーダーシップからメンバーシップへ」なんてお堅い組織論まで披露される。

メンバーとは「コーチ」しあう関係だなんて、感動的。

大企業の組織では、メンバーはRAID5で並べられた冗長ディスクセットみたいなもんで、1つ壊れても他のディスクでカバーできるから、ディスクの障害を検出したらそのディスクは即効で接続解除され、かわりに、使わないでいた予備のディスクが迅速に自動的に使用開始される。大企業の人材も同様に運用される。すべての人は、代替可能、これが建て前。

よくいいますわな。人間が集団を作ると、上位10%の大活躍層と、下位10%のただメシ層と、それ以外の標準層に自然に分化すると。で、上位の人が離脱すると新たに大活躍する人が生まれ、下位の人が離脱してもやはり誰かがただメシ状態に移行する。

環境に応じて人間は役割を変え、組織は再構成される。人間は様々の役割に対応できるように柔軟にできているのだ。

だから、あらゆる人間を置き換え可能としておくことが、組織の管理職の重要なミッション、基本も基本の危機管理術。

だけど、知識社会にあっては、企業に力を与えるのは、個人だ。余人をもって変えがたい個人。だから、組織に関する話の多くは、知識社会に移行を始めた西暦2000年前後に、一旦白紙、反故になったと言っていいのかもしれない。

新しい組織論を心理学をベースに再構成しますよ、そういう宣言があってもいいかもしれない。古典とされるリーダーシップ論の本を今にして読んでみると、いささか古臭く感じてしまうというのなら、その理由は、環境の歴史的大変化ということになろうか。

理論家にとってもビジネスチャンスな時代到来。

さて、チームハックスと同じメンバーの前作『スピードハックス』は、チームハックスほどこなれた構成ではなかったように見える。それぞれのハックスは、2人の著者のどちらかの名前付き。チームワークではあるのだが、互い違いにそれぞれのアイデアが混ぜられて串刺し状に並べられた印象も無くも無い。

スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術 Book スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術

著者:大橋 悦夫,佐々木 正悟
販売元:日本実業出版社
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これは自分の創造性・生産性・モチベーションを維持するノウハウ。自分だから簡単ともいえるし、なんともならんとも言える。チームと言う複雑なエンティティも、ヘテロな人間も出てこないから、シンプルといえばシンプル。これまでの自己啓発書でもそれなりに扱われてきたテーマでもあり、NLPでいいじゃん、なんて無粋な捨て台詞も飛んくるやも。

このシリーズの原点が個人の生産性向上にあることは間違いない。すぐ役に立つという意味での利便性という点でも、個人のほうは間違いなく即効性を感じさせる。

だけど、発展性というか、潜在的なインパクトに考えが及ぶと、チームに関する方が圧倒的に面白いと感じるのは、ワタシの好みに過ぎないのか。そうでもないんじゃないか。

『EQ』のダニエル・ゴールマンも昨年『SQ』を出版した。SはSocietyのS、社会のSだ。

烏合の衆としての集団ではなくて、ヘテロな能力をもつ人達の集団。チームという言葉にはフラットな組織、ヘテロな能力のニュアンスを感じる。そういう高ポテンシャルチームが最高のアウトプットを生み出せるよう、環境整備するための指導原理みたいな理論。そういうのがあると、知識社会というめちゃ複雑な社会では、とても有難いのだろうなと感じる。

ちなみに、心理学者の佐々木正悟氏は7月に『ブレインハックス』を、大橋悦夫氏は『そろそろ本気で継続力をモノにする!』を8月に出版されている。ちょっと似たアプローチを『1分間マネージャー』の著者である心理学者ケン・ブランチャード氏に感じるのだが、ブランチャード氏は、異なるテーマを異なるゲストを共著者に迎えて上梓している。佐々木氏も、そういう手法でハックスシリーズの裾野を広げてゆくのかなあ、やっぱりと、外野は興味津々で見守る。

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2007年9月12日 (水)

凹んだら読むべし舶来課題図書百撰

なんちゃってMBAを狙っている。

学位は特に必要無い。MBAのもつ見識が欲しい。形より実、ビジネスの大小にかかわらずそれなりに役に立つはずだ。MBAのコースでテキストとして広く選ばれている書籍がさしずめ必読書ということになろう。定番では例えば、マイケル・ポーターの『競争の戦略』と『競争優位の戦略』があって、タメシにこの2冊を入手してはみたのだが、1時間で読み切りの甘ちょろい通俗ビジネス書に慣らされたオツムには、いささかきつい。はっと気づけば何時間も同じページをながめてる。かくて、とりあえず『競争優位の戦略』はギブ・アップして、『競争の戦略』のほうを攻略せんと、ばたばたともがいている今日この頃である。

コトラーの『マーケティング・マネジメント』もほぼ放置状態。なんちゃってMBAを貫徹するには、『継続力』も『覚悟力』も足りない。やっぱり、余裕ができたら社会人コースでも受講しないと、ダメだということは痛感した。自力の学習能力が無いことを自力で学習したことになる。ある種の前進。

正攻法で駄目となると、精神論にすがりたくなる。となれば、行く先は成功哲学に自己啓発と相場は決まっている。じゃあ、その方面では、どんな本を読んどきゃいいのか。

まずは成功哲学。

世界の成功哲学50の名著 Book 世界の成功哲学50の名著

著者:T・バトラー=ボードン
販売元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
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名著というだけあって、古典が多い。Classicsてぇんだからあたりめぇか。新しいものでも『チーズはどこへ消えた?』や『金持ち父さん貧乏父さん』がリストにあって、読む楽しみを強く意識した選定だと感じる。50冊制覇という、山で言えば日本百名山踏破、なんてのと同じノリ。もっとも、成功したシリーズものの原点に触れとく価値というのは、やっぱりあるだろうと考える。 50 Success Classics: Winning Wisdom for Work and Life from 50 Landmark Books
原書

そして自己啓発。

世界の自己啓発50の名著―エッセンスを読む Book 世界の自己啓発50の名著―エッセンスを読む

著者:T・バトラー=ボードン,野田 恭子,森村 里美
販売元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
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エッセンスを読んでその本を読んだ気になってちゃダメで、要するに次に読む本を決めるための最小限度の情報が載っていると思ったほうがいい。また、昔読んだけどわすれちゃった人が思い出すためのヒントのような。そういう使い方なら、なかなか役に立つ本だよなというのが率直な印象である。 50 Self-Help Classics: 50 Inspirational Books to Transform Your Life, from Timeless Sages to Contemporary Gurus
原書

両方にステファン・コヴィの「7つの習慣」が入っているし、アンソニー・ロビンスも異なる本だけど、それぞれで選ばれている。まっ正直に選べば重複が多いのは納得できるのだが、日本では入手困難な本、言葉をかえると日本ではそれほど高く評価されてない本も含まれているて、日本じゃなくて世界、ということも感じるのだが、やはりあくまで著者T・バトラー=ボードンの選択した百選、という解釈にしといたほうが正確だろう。

誰が選んでも完全に公平な選択は無理。識者100人にアンケートなんて安易な方法をとれば、平均的に選ばれる常識的で似たようなもんばっかりになって、尖がった異色作なんてのはことごとく落ちてしまう。本当は、そういう異色作もバランス良く入れてゆかないと、偏食、という感じのことになりかねない。

そういうことで、50+50で百選を並べてみると、知っている著者は半分もいない。読んだ本なんて、10冊も無い。ただ、机の上に積んである本も含めると、打率で言えば、イチローぐらいにはなる。こういうのは体系的に、意識して広めに読んでゆかないと、気が付いたときには大前研一さんの本だけずっと読んでました、なんてことにもなる。

MBAじゃなくて、さしずめMaster of Success and Self-HelpでMSS、ちょっと格好悪いか。ディプローマ・ミルなんてのが社会問題化しつつあるけど、ここにあげた百冊を本当に読破したら、自分にご褒美、自称MSS、あるいは、なんちゃってMSS。あくまでネタ、ジョークの一種であるが。百冊踏破は年内の目標、とかなんとか、無理な約束は口にしないのが約束を守るヒトである秘訣。

ちなみに原書には、スピリチュアル50撰も心理学50撰もある。心理学はさておき、スピリチュアルのほうは、ま、日本じゃ洋モノがウケルわけもないから、邦訳が出版される運びにはならんだろうな。スピリチュアルの21世紀とはいえ。 50 Spiritual Classics: Timeless Wisdom From 50 Great Books On Inner Discovery, Enlightenment And Purpose 50 Psychology Classics: Who We Are, How We Think, What We Do, Insight and Inspiration from 50 Key Books

と思ってたら、なんと、スピリチュアルのほうが明日9月13日に出版されるとさ。

世界のスピリチュアル50の名著 エッセンスを知る Book 世界のスピリチュアル50の名著 エッセンスを知る

著者:T.バトラー=ボードン
販売元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
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これは興味を感じますな。そこは、それ、なんちゃってMBA崩れ。精神論もここまで来れば、もう、なんというか、それでアガリという境地。こうなりゃ心理学50撰のほうもよろしく。

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2007年9月11日 (火)

その領収書は尻隠さず

格差社会の異常な進行は、所得再分配がうまく機能してない証拠。

それはまた税金の問題でもある。

税務署としても、かつての査察官の公開する情報があるいは税務調査の抜け道になるかもしれないとなれば、困ったことではあろう。

一方、税金を払う側にとっては、税の情報格差による不利の解消、すなわち税の公平性を確保する上で、便利な情報源となることは言うまでも無い。

そば屋はなぜ領収書を出したがらないのか?―領収書からみえてくる企業会計・税金のしくみ Book そば屋はなぜ領収書を出したがらないのか?―領収書からみえてくる企業会計・税金のしくみ

著者:大村 大次郎
販売元:日本文芸社
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例えば会議費。上限五千円というのは、サラリーマンの頃は神経質に守ってた記憶がある。規模の限られた自営業の場合、接待費がある枠内で認められてるから会議費の存在はすっかり忘れてて、五千円てのも今時微妙な金額だけど、確かに使えれば便利だよなと思い出した次第。不勉強にて自業自得。

しかし、である。

五千円に費目の線を引いとくのもいいけど、例えば1万円を超える飲食には特別地方消費税を課徴するというような、昔やってた徴税方針のほうが税収増という目的では実効が伴うのではないかと。

なぜ廃止したんだっけ?

贅沢する人が贅沢した分だけ多めに税金を払う。野菜だ穀物だってベーシックな食品から同じ税率で消費税を取るなんてのを止めるための財源を、こうした贅沢税で確保するなら、抵抗勢力を説得するのもそれほど難しくないはず。

すこし前のことになるが、欧米のいい店でメシ食うと、ふにゃふにゃ異国の文字でようわからん明細書の合計の線の下側がさらに半端じゃなく複雑だったような。色んなところの税金がかかって、それもなんだかんだで20%超えてたような。大昔の記憶なんで、間違ってたり、今は変わってたりしたら御免なさい。

そしてまた、しかし、である。

そのように税金が富裕層向けの店に集中するようになると、店のほうもさらに税金を隠す旨みが増えて、税務調査も困難を極めるだろうなと。ここまで考えると、ああ、それで税金は取りやすいところから取るという仕組みになってんのかと、勝手に納得したりであった。

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2007年9月10日 (月)

なぜ、成功にも失敗にも注目するのか

起業して上場まで到達するのは千人のうち数人と言われる。

別に上場がゴールではないし、自営業で地味に長続きさせるなんてのもある種の幸福な選択ではある。しかしいずれにせよ、失敗するケースは、それ以外のケースより圧倒的に多い。

となれば、レベルはそれぞれ異なるにしても、どこで上手に撤退するか、まるでチキンレースみたいになってしまっているとすれば、それは寂しい限り。

米国の起業家に言わせれば、成功するまでに数回失敗するのが標準的というから、撤退というオプションは別途用意しておいたほうがいい。

喩えるならば、マンションの非常時経路。隔壁を破って非常梯子を下ろして、脱出!

残念ながら失敗しちゃったという人が、上手な撤退について語るといえば、それは貴重なノウハウといえる。

カッコ悪く起業した人が成功する   Get Far with Guts Book カッコ悪く起業した人が成功する Get Far with Guts

著者:鈴木 健介
販売元:光文社
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撤退については、一般には、語られない。

敗軍の将兵を語らず、なんて美徳というより、他人に迷惑をかけてりゃ口を噤まなきゃならないこともわんさとあろうし、そもそも失敗は名誉なことではない。天下御免の向こう傷って言ったって、そりゃ傷以外の何物でもない。

スタートする時に失敗を考えて準備しとくというのが、武士道精神を尊ぶならば、もっての他となるのだろう。しかし、成功する人より失敗する人のほうがケタ違いに多いんだから、失敗は武勇伝ではあっても決して恥ずかしい話じゃないし、失敗に備えて保険をかけとくのも卑怯というにはあたらない。だけど、日本では総じて、まだ起業に関する周囲の理解なんてあたりが成熟していない。

失敗は反面教師になる。だけど、それだけで成功へのパスポートになるわけではない。特に本作で気になるのが、失敗しっぱなしのまんま成功法則を書こうとしてるフシが見うけられる点。

失敗の原因を分析するったって、それは恐らく多数の障害のうち最初にうちに直面するやつばかり。全部クリアする前にゲームオーバーになってるのだから。失敗の分析をいくらやっても、成功のコツを引っ張り出すことにはならない。あくまで失敗しないコツだ。

勝てば官軍。運が良かっただけだろうっていう成功者のケースでも、成功事例には成功者の告白としてそれなりに聞く価値がある。情報の取捨選択は、受け取る側の仕事。勝てる勝てるでハイな精神状態では、突撃あるのみ、ちょっと躓けば玉砕へとまっしぐら。

成功者の話にも失敗例についても耳を傾けるそれぞれ価値があり、あとはバランスの問題。数多の起業本は無責任にも過度に楽観的、『起業バカ (ペーパーバックス) 』などアンチ起業ブーム本は、逆にディスカレッジしすぎで、社会に機会損失の害毒を撒き散らしている可能性も。

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2007年9月 9日 (日)

ポジショニング指向の新富裕層マーケティング

内容の濃い本は読むのも大変。

最初のページから順に読んでゆくのも集中力が続かないわたしは、時として、最後の部分から読むことがある。小説などには適用できない方法であることは言うまでも無いが、ビジネス書では役に立つ。結論として何がいいたのか、最初にわかれば、そもそもそこに至る部分は割愛できる可能性が高く、斜め読みをそれなりに正確に進め易い。

最近興味をもっている新富裕層マーケティングについて、その名もずばり、『新富裕層マーケティング』という本を読んでいたのだが、これがまさに逆読みパターン。

並行して、関連書籍をキーワード検索して情報収集している際に出会った本が、これである。

顧客を知り尽くし顧客を満足させる法 Book 顧客を知り尽くし顧客を満足させる法

販売元:ダイヤモンド社
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顧客を獲得し維持する方法についてCRMを中心に8つの論文を選んで集成した書籍であって、そのなかに『新富裕層のマーケティング』(原題: Selling to the Moneyed Masses)という30頁程の論文がある。最近注目されている各論の一つとして忘れてならないとの編者の判断だろう。読んでるうちに、ありゃりゃ、こりゃどこかで読んだような記憶が。 Harvard Business Review on Customer Relationship Management (Harvard Business Review Paperback Series)
原書

そりゃそうだ、並行して読んでる『新富裕層マーケティング』を要約した論文だったわけである。

新富裕層はマスとして扱えっていうのだが、CRMを使うという文脈で考えれば、ワン・トゥー・ワンという究極の小セグメントに行き着くわけで、それを否定してしまうと、何でCRMの話題にこの新富裕層マーケティングを持ってきたのか、いまひとつ編者の意図がわからなくなるのである。

旬の話題である。

それだけのことかもしれない。

しかしこうなってくると、新富裕層マーケティングのほうをキッチリ片付けたくなってくる。

Mass Affluence: Seven New Rules of Marketing to Today's Consumer Book Mass Affluence: Seven New Rules of Marketing to Today's Consumer

著者:Paul Nunes,Brian Johnson
販売元:Harvard Business School Pr
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原書はかように地味な装丁だが、邦訳版は派手なデザインで、「蜜蜂が花畑で蜜を吸う」の図。

マーケティングにおいて、セグメント、ターゲット、ポジションという順序で顧客と企業の関係を設計してゆく段階で、セグメントは細分化する傾向にある。本書ではこの過剰な細分化に警鐘を鳴らし、マスとして扱うこと、さらにポジショニングの重視を薦める。

こうして、新富裕層をマスとしてマーケティングするために、副題にあるように、下記の7つのルールが、ポジショニング、商品設計、顧客獲得のために設定される。

  1. 新たなミドルグラウンドを探せ
  2. 顧客を平等に扱うな
  3. 必需品ではないが、あれば便利なものを探せ
  4. 新たな所有形態を模索せよ
  5. 消費に対する見返りを大きく
  6. グローバルに考え、地元密着で売る
  7. 不特定多数に向けたプロモーション

このうち、4の新たな所有形態としては、例えば最近の例で、日本でもビジネスジェットを複数クライアントでシェアするサービスが開始となった。これがそのわかりやすい例のひとつであろう。

所得分布の裾野の広がりの部分の傾斜がなだらかになってきたので、そこをマスとして顧客化しましょうというのが、本書のココロ。ただ、例えば製造業のほうは、マスプロダクションをとっくに卒業して、セル生産など、ポスト大量生産パラダイムを実践しているわけで、なぜ今さらマスなのか。新富裕層はマスとして扱われることを望んでいるのか。

常識的に考えれば自分がお客としてワン・オブ・ゼムに過ぎないと見なされているのは、あまり気分のいいもんじゃない。普通は特別な存在として扱われたいのではないか。そういうのは逆に鬱陶しい人も例外的にはいるだろうけど。ここは理解を得られるというか、妥協を求めても大丈夫なトコなのか、いささか心配な点ではある。

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2007年9月 8日 (土)

ハムシーンの黄一色にセンチュリオンの黒が映える

蛇の道は蛇。

何度も修羅場を通り抜けているから、どんな危機にも突破口をこじ開ける。その場で非合法だろうとグレーだろうと、勝てば官軍、終わる頃にはドサクサにまぎれてどの道うやむやになってしまう。戦場のプロフェッショナル・ジャーナリスト、不肖・宮嶋がイラク戦争勃発時にバグダッドに向かった際の、現地の緊迫感を伝える貴重なレポート。

なぜもっと早く読ませてくれんかな。

不肖・宮嶋のビビリアン・ナイト 上 爆弾ボコボコの巻 (1) Book 不肖・宮嶋のビビリアン・ナイト 上 爆弾ボコボコの巻 (1)

著者:宮嶋 茂樹
販売元:都築事務所
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テロ特措法の議論が盛り上がる今が一番のタイミングでもあるけど。

さて、本書ではバグダッドでの橋田信介氏との再開が語られ、氏の人となりがしのばれる。不幸な事件の後日談については、勝谷誠彦『彼岸まで。』にてバンコクでの葬儀の模様が描写されていたが、現地での出来事については、本書の下巻を待て、ということであろう。

勝谷氏もイラクで一度は死にかけたが、不肖・宮嶋氏も、隣のビルは吹っ飛ばされるは、やっぱりアラブの国の死神の横をすり抜けて還ってきていたのだね。

誤爆だらけ、それもフライングがあったり、ハチャメチャなハイテク戦争の現実が目撃談として生々しく伝えられる。日本の大手メディアのミッションとはいえ、基本的に、フリーというシガラミ無き立場であるからこそ、限りなくナマに近い情報を発信できる。妙な色はついてないと信用できる可能性が高い。そういう情報ソースはプライスレス。

日本で巨ベンツに乗ってようと、餞別であるかのように中東出発直前に受け取ったアメックスの無敵ブラック・カード、センチュリオンを使ってようと、それは渡航保険もかけられない極限的リスクに応じた究極の危険手当。

ところが現地では妙にセコくなって、100ドルをケチった挙句に危機に瀕してるようなところも感じられる。新富裕層はトリクルアップの背伸び購買をするために、日頃トリクルダウンのケチケチ購買パターンをとるなんてマーケティングの話を思い出してしまった。身についた行動パターンは戦場だろうと変わらない、ということかもしれないが。

デザートストーム、ハムシーンに、ニッポン男子なれば黄砂やら春一番を連想し、不意に望郷の念にかられて一句、というところかもしれない。どうなる不肖・宮嶋。今しっかり生きててこの本を上梓したことを知っているから、安心してそう問える。

出版されたばかりの下巻、入着が待ち遠しい。下巻についてはこちらネ

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2007年9月 7日 (金)

またタイトルに騙されました

譬えがユニーク。

というより、ちょっと無理がある。ニッポンのビジネスはそんなに牧歌的ではないかもしれません。

社員のリストラを決断するか、経営陣の刷新を進めるか、いや待て、まずそのコンサルを切ったほうがいい、話はそれからだ、そういうケースが目に浮かぶ。

おお、南蛮渡来、あきないの秘法。

なぜ、エグゼクティブはゴルフをするのか? Book なぜ、エグゼクティブはゴルフをするのか?

著者:パコ・ムーロ
販売元:ゴマブックス
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ニッポンいいとこ、ゴルフという語に釣られて読むビジネスマンがぎょうさんおって、ベストセラー。出版社さんは笑いがとまらず。まんまと買わされた読者はどう思ったのだろう。

懲りて本を買う気が失せるようでは出版不況は自業自得、なんてことはないと思いますけどね。

そしてお待たせ、期待してたゴルフの話は13のショートストーリーのうちの1つだけ。楽しみにしてた「なぜ」の答え、それはオチのようなものと解釈したが、それがそのショートストーリーの最初のページに書かれていた。

下記ではダイジェストした表現を用いたので、
正確には本書を参照のこと。
藤沢・平塚の図書館にも蔵書あり。

以下、ネタバレ注意 → → → → →

『ゴルフは経営に似てるから、経営者に人気があるんです』

→ → → → → 以上、ネタバレ注意ですた

おいおい、そりゃないぜ。

ま、野球は人生だし、サッカーが青春ですわ。

タイトルに騙されるのはもう卒業したい今日この頃。

60分で「人生で成功するための大切なポイント」が身につく、と書いてあるのは、この本を最後まで読む忍耐力はたいしたもので、それが成功のためのポイントだよ、そういうオチじゃないよな。

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2007年9月 6日 (木)

ジャーナリズムもプロシューマ化進む

Web2.0に興味がある人なら、このタイトルでこの人が書いた本というだけで、MUST。書架に見つけた瞬間、脊髄反射的に手が伸びる。

フラット革命 Book フラット革命

著者:佐々木 俊尚
販売元:講談社
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グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 』で知られる著者は、本作では、「メディアがフラット化する」、こういう現在進行形の現象について伝える。

トーマス・フリードマン『フラット化する世界』のような世界はひとつに繋がる感のような大風呂敷の話ではない。

世論はどのように作られるか。

これまではジャーナリストが作ってきた、そう言えるのかもしれない。

それが良い悪いはさておこう。大手新聞社やテレビ局、雑誌といった巨大メディアが中心となり、所属もしくは契約するジャーナリストが記事を書き、議論してみせて、受け手はその情報と『意見』を、いわば無批判で受け取り、自分の意見であるかのように錯覚してきた。

しかし今やネット社会。匿名掲示板やブログを通じ、誰もが自由に情報発信するから、世論操作(そういうのがあったとすれば、ということにしておきます)が難しくなった。さらに事件はことごとく迅速にアップされる。写真や動画やプライベートなプロファイルまで公開され、隠蔽(これも、そういうものがあったとすれば、ということにしておきます)が起こりにくくなった。

ネット社会はこうして成熟してきたが、未だに多くの問題を孕んでいることは間違いない。匿名性がその問題の一つとして、本書では取り上げられる。素晴らしいのが、匿名のはずの当事者に、実際にインタビューしていること。リアルな世界で著者と当事者が顔をあわせているのだ。これが面白い。

また著者は、ネットがメディアとしての公共性を有するか、という問題にも突っ込んだ検討を行っている。匿名性、責任の所在、ここらへんが論点になっている。

まあしかし、読後に感じるのであるが、情報発信というのはジャーナリストが扱うようなお堅い話ばかりじゃなくて、この食品の味はどうこうで、こう調理する美味いとか、他愛の無い情報だけど役に立つ、価値がある、そういう方が圧倒的に多い。ただの論壇というなら、ブログはここまで普及しない。ただのローカルなコミュニケーションツールとして使われているのが、最もポピュラーな姿ではないか。

メディアがフラット化する。情報の受け手を決め込めば、そんなに変化したように見えないかもしれないが、情報発信が容易になり一般市民に開放されるということは、そこに色々なチャンスが生まれ、情報発信者の世代交代も促される。

予定調和なんて牧歌的な美徳も無い、弱肉強食の騎馬民族的社会がそこに待つ、てか。

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2007年9月 5日 (水)

巨匠が敢えてルビコン川を渡るとき

スピリチュアルの21世紀とよく言われる。

不思議な感受性やいわゆる超能力にも人々の興味が集まる。

皮膚感覚を扱った『第三の脳――皮膚から考える命、こころ、世界 』なんて本も出版された。

無意識の瞬間的判断力について『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい (翻訳) 』という著作も知られている。

私達がサイエンスとして今まで扱ってきた感覚以外の、様々の感受性について、最近ではアレルギーを示す人もあまり無く、普通に語られるようになってきた。

こういうのを全部ひっくるめて、心の時代、スピリチュアルの21世紀に、本当に向かいつつあるようだ。

宮部みゆきさんの作品にも、『ドリームバスター』という、SFとはいえ、結構スピリチュアルなニュアンスを含む作品がある。だから今さら、『楽園』で『超能力』の話が出てきたところで、あまりびっくりするようなことでもない。しかし科学捜査による合理性を前提に筋書きが組み立てられてきたであろうこうした犯罪小説に登場するとなると、意外でないといえば嘘になる。ブルータスよお前もか。

前畑滋子の表現を借りれば、一線を超えた、ルビコン川を渡った、ということに。

楽園 上 (1) Book 楽園 上 (1)

著者:宮部 みゆき
販売元:文藝春秋
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楽園 下 Book 楽園 下

著者:宮部 みゆき
販売元:文藝春秋
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前作『模倣犯』を読まずにこちらを読んでしまった。そういう人も少数派だろうが、心配にはあたらず。なにせ、ドリームバスターだって、全部読んでるけど、「4」を読むときには「3」の話なんてまったく覚えてない。それでも十分に面白いのが、巨匠たるゆえん。

事件が終盤になってばたばたと動くのはよくあるパターンだが、あとは勝手に想像してねと読者側に投げやってしまうのでなく、丁寧に後日談を重ね、善良なる登場人物を不幸のどん底に放置しないのは読み手にとっては嬉しい配慮。今夜も快眠できそうだ。

床下から事件の被害者の遺体発見という話は、現実の事件でもあったが、乃南アサの『風の墓碑銘』も似た発想となっていた。こういうのもシンクロニシティと考えてよいのかもしれない。

表面的には偶然の一致だけど、そこに時代背景という必然性が隠れている。

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2007年9月 4日 (火)

アンバランス消費は人の常

刷新オープン後1年に満たない寒川総合図書館では、書架に並ぶまっさらな本を眺めるのも楽しい。システム上の検索では検出できなかった本に、こうしてリニアスキャンしてゆくことで出会うことが出来る。

興味のあるテーマの書架は本を探す機会も多くなるわけで、最近でいえばマーケティング。そこに、茅ヶ崎在住として知られる辰巳渚さんの『なぜ安アパートに住んでポルシェに乗るのか 』が蔵書されてていつも気になっていた。なんかユルい構成だよなあと、わたしに言われたかないだろうが、パラパラとめくってみるにつけ気になるのは、最近やたらこういう話題をよく耳にするというか目にすること。

一品豪華主義のような生き方は昔もあったし、日本に限った話でもない。住所不定だけどベンツに寝泊り、なんてハーレムな人の生活を何かの番組だったか、10年以上前に聞いたことがあったような。

そういうのをちょっと前は『こだわり』なんて呼んでたかと思いきや、上下に隣接するセグメントの消費行動を取り入れるのが最近のトレンドです、なんて論調で本がばんばん出てきた。

なぜ高くても買ってしまうのか 売れる贅沢品は「4つの感情スペース」を満たす Book なぜ高くても買ってしまうのか 売れる贅沢品は「4つの感情スペース」を満たす

著者:マイケル・J.シルバースタイン,ニール・フィスク,ジョン・ブットン
販売元:ダイヤモンド社
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本書でもワンランク上の商品・サービスをニューラグジュアリーと呼ぶ。

さきほどの『安アパートでポルシェ』のようなアンバランスな消費に駆り立てるのは、孤独でストレスを感じる現代の消費者の特性とし、その消費行動を「4つの感情スペース」で説明しようとしている。

Trading Up: Why Consumers Want New Luxury Goods... And How Companies Create Them
原書

  1. 自分を大切にする
  2. 人とのつながり
  3. 探求する
  4. 独特のスタイル

ええっと、最後のやつは日本版だけ「見栄っ張りの仲間と同じスタイル」に差し替えるべきか。隣の人がニューラグジュアリー消費をするから、うちも同じの買ってパパ、って話になりがち。『濃い』個性派をめざすなんてのは、出る杭打たれる日本ではもはや勇者。

そして高額商品の話が出れば、お約束で逆の極、価格破壊商品について。

なぜ安くしても売れないのか―一人二極化消費の真実 Book なぜ安くしても売れないのか―一人二極化消費の真実

著者:マイケル・J・シルバースタイン,ジョン・ブットマン
販売元:ダイヤモンド社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

同じ品物なら、安くしてくれりゃ買いますよ。だけど、いくら安いからといっても、命が惜しいからあそこ産のうなぎは買う人もいない。落っこちてても猫がまたぐ、わけもないが、こういうのが安くても売れないのは、自明。

相場より安いったって、日本で一番安かろうったって、消費者側には買わないという選択肢もあるのだから、買いたくなるようなドラマ性が商品には欲しいとこ。

Treasure Hunt: Inside The Mind Of The New Global Consumer
原書

さて、結論としては、消費は上下2極化するということ。ハイエンドとローエンドが売れる。個性の乏しい中間層が市場を食われる。

しかしこれは米国の調査であって、日本ではどうなのか。総中流が崩壊して少数のニュー・リッチと多数のロウアー・ミドル以下に分化するといわれ、その社会でハイエンドとローエンドがどこらへんを意味するのか、あまり明らかとはいえない。ここでハイエンドが意味するところは、超富裕層向けの少数超高額商品ではないが、この層への憧憬からある程度の影響を受けた商品やサービスである可能性は高い。主ターゲットはある程度のボリュームがある、アッパーミドル層あたり。同じように、ローエンドといっても、標準以上の品質で低価格という意味で、付加価値はないけど不満もない空気みたいな存在感の商品となるのだろう。

満足できる品質の、低価格商品を探す、掘り出す。まさにトレジャーハント。お買い物も先週は高級セレブ品、今週はディスカウント店巡り、それぞれ楽しいエンターテインメント。一人のなかに2つの消費行動。こういうと新しいトレンドっぽいけど、実は温故知新みたいなところじゃないか。

道楽、ってのを金持ちでなくても楽しむお国柄であれば、道楽すなわちアンバランス消費。他の人にはまったく理解できないマニアックでオタクな浪費感情スペースで、こちらもこちらで分析を進めすぎると『無粋』と呼ばれる野暮な世界が待っていそうな。

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2007年9月 3日 (月)

食のブランドも秘訣は地産地消にある

米はニッポンのが一番美味いんだよ、ってアメリカに赴任した人は、カリフォルニア米を食べてびっくりする。日本の銘柄米と同じように上品で美味で、しかし低価格だ。こんなもんが直輸入された日にゃ、えらいことになってしまうわな。

ワインも今ではカリフォルニア・ワインを悪く言う人はいない。日本に輸入されている低~中価格帯のものには一口飲んでその後口にするのを躊躇するほどひどいのも無いとはいえずに懲りた人もいるかもしれないが、概して品質は良い。フランスワインと対決して勝ったという事実は、当時としてはセンセーショナルだったが、今なら、ああ、そういうこともテイスティングの条件によってはあるでしょうねと、特に驚くことでもない。

ただ、本書を読んで目を疑うのが、赤で負けたフランス銘柄。ムートンだ、オーブリオンだ、レオビルだ、モンローズだと、全部ボルドーだけど、フランス代表といえる銘柄ではないか。

パリスの審判 カリフォルニア・ワインVSフランス・ワイン Book パリスの審判 カリフォルニア・ワインVSフランス・ワイン

著者:ジョージ・M・テイバー
販売元:日経BP社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

事前情報の無いブラインド・テイスティングが無茶というのも確か。初めての経験みたいな味のもあるし、なんちゃってフランス風ワインもありますなんてったら、プロとはいえ、口にする順序で味覚はそりゃ混乱するだろう。ワインだけ評価するなら、カリフォルニアのワインもフランスに勝るとも劣らない、このことがわかっただけで当時は十分に価値があったといえる。 Judgment of Paris: California Vs. France And the Historic 1976 Paris Tasting That Revolutionized Wine
原書

しかしその後、フランスワインの価値が減じたという話は聞かない。BRICsという新しい大量消費国を加えてワインの需要が国際的に高まるなか、やはり高級銘柄として指名されるのはフランス産ということで間違いない。一本のアルコール飲料としてだけでなく、歴史と文化を一緒に飲んでいるといっていいと考える。

また、フランスやイタリアで食事をして痛感するのは、同じパンやらパスタやら、ベーシックな食材なのに、現地で食べると無茶苦茶美味しいこと。これは地産地消と似たような話なのだと思う。空気とか、気候とか、農作物のテロワールと同様、食べる環境もテロワールに入れてなんぼ、というところがあるのだと考える。

アメリカで米国産の牛肉の塊を食うときにはカリフォルニア産の赤もいいけど、フランスで鴨を食うときにカリフォルニアの赤はわざわざ合わせたりしないだろうなあと。

食文化が発達しててワインもその中に位置づけられるフランス。イタリアもスペインも同様。アメリカはといえば、テックスメックスの料理とかロブスターなどシーフード料理も思い浮かぶが、現地で発達してきた食文化というより、メルティングポットを成す各地域の移民が持ち込んだものが大部分なのかなあと。

アメリカ発世界への食文化といえばマクドナルド、ファストフードということになる。

色々な食材を組み合わせるスローフードには各国で歴史があって、かれこれ建国200年超とはいえ歴史という意味ではまだまだ短いのかもしれない。ワインを飲む背景にある食文化、食べ合わせる食材、料理の手法、そういうものと結びつくことで、ワインの価値が高まるといって差し支えないだろう。ワイン一本でガチンコ勝負というのは、ワインを嗜む粋な生活というのとは、方向を異にする。ワインを消費する人たちの文化というより、ワインを売る人たちの習慣に沿ったものではないか。

バーティカルでもホリゾンタルでもテイスティングは遊びとして面白いですが。

今回の話には出てこなかったが、ブルゴーニュでは、ロマネ・コンティより隣の畑のラ・ターシュのほうが美味いなんてよく聞く話。しかし誰もそれを大声で言わないのは、その事実にそれほどの意味がないことを知っているからともいえる。同じように、ロマネ・コンティそっくりさんに作られてロマネ・コンティを超えたともいわれる『カレラ』にしても、美味いんだけど、ロマネ・コンティを飲んだときの充実感は味わえない。こういうのが、ブランドとか、歴史とか、文化の本質なんだなと、まあ、とてもわかりやすい実例になっていることではあるのだが。

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Good Cop, Bad Cop

警察官は子供達の憧れの職業。

今も昔も、洋の東西を問わず。

キッズの夢を壊す悪いコップは即お仕置きよ、そういうシンプルな善悪二元論的でEZな勧善懲悪型インサイド・ストーリーも、テレビや映画館や書店でウケる必勝パターンといって間違いなかろう。

ご家庭で見るならジブリもいいけど、コップもね。

コップものはPG-13指定も少なからず、なのだが。

さて、茅ヶ崎駅前サン・ビデオでは100円レンタルの日というのがあって、いつも洋画DVDを借りるようにしている。英語脳の劣化を進めないためだが、字幕を英語にしとくと、字幕に頼らなくなるけど、映画の筋の細かいところはわからなくなる。それで映画を見たと言えるのか、単に英語のヒアリングをやりましたというべきではないのか、悩ましいところだが、それでも映像だけでもわかりやすいアクションもの、とりわけコップものなら、なんとか理解できる。

16ブロック DVD 16ブロック

販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
発売日:2007/06/27
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ブルースウイリス演じる刑事のしょぼくれ度はやりすぎ、マクレーンというよりコロンボ刑事の晩年なんて姿を想像させて悲しくなってくるが、しかしアクションとなると突然輝きを放つところは、やっぱりアナザー・ダイハード、ダイ・ハード1.9として見るのがオトナのマナー。社会派のコロモを被せてコロンボ的知性派風にカラッと揚げる仕事はしてあっても、追跡劇のスリルと派手なアクションが中心にデーンと鎮座している。

さて、一方、しょぼくれの対極にある、バリッと男前で高級スーツを着こなす超エリート系の公安系コップ。そんな職種が米国にはあるようだ。シークレットサービスのバックステージてのも興味深いが、ストーリーそのものはよくある系かもしれない。

ザ・センチネル 陰謀の星条旗 DVD ザ・センチネル 陰謀の星条旗

販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日:2007/02/02
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そしてどこかで見たような映像。そのテイストは、

『24』 + 『ディスクロージャー』

キーファー・サザーランドはジャック・バウアーさながら、凄いスピードで動き回る姿は本作も同じ。落ち着きが無いとお嘆きの諸兄もおられようが、これはこれで一つのスタイルとして確立したことは御長寿『24』の成功が物語っている。

ワシントンDCを舞台とする、アメリカン人にだけわかればいいやという、アメリカンなテレビドラマのノリ。キャストが豪華じゃんと感じる一方、画造りにはチープな香りも漂う。贅沢に作られたB級、ここらへんがカウチポテト(死語か?)にはサイコーなのだけど。

そしてマイケルダグラスは今回も女難、というオチ。

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2007年9月 2日 (日)

ストレス・フリーのビジネス書というニッチ

タイトルに釣られた、

ユニークな記事が載ってると紹介されてた、

などなど、

ビジネス書には

読みたい内容が

いっぱい書いてある。

わかってる

けどどこまで行っても

原稿用紙を埋めた

まんま

マトリックス

状に

文字ばっかり並んでると

 

ああ

もうだ。

 

斜め に読む気も起こらない。

 

見た目に特徴が無くて、

キーワード拾うだけでも

れる。

そんななか、装丁で読ませる本がある。

いや、失礼。

中身タメになる。

けど、

装丁ほどにはすごくない

かも

なぜ、予想は裏切られたのか 「こだわり消費」のマーケティング Book なぜ、予想は裏切られたのか 「こだわり消費」のマーケティング

著者:夏目 幸明
販売元:PHP研究所
Amazon.co.jpで詳細を確認する

マーケティング屋さんといえば、チラシ作りも手がける業界の方。ならばレイアウトもコピーライティングもお手のもの。本だってキャンパスだ。フォントにバリエーションつけたり、白黒引っくり返したり、背景にうっすらモノクロ写真をおいたり、大きな空白で少数の文字を強調したり。

それはもう、大胆な、まさに常識にとらわれない、本書のテーマにぴったりの紙面作り。

こういうレイアウトはIT系コンサルや情報起業家やカリスマコーチの本ではよく見るけど、ストレス・フリーで読ませてくれるみたいで、その効果は大きい。本書で言わんとしてるのは要するに、


ニッチを極めろ


この一言だ。事例として取り上げられるのも、今となっては超有名となった男前豆腐店をはじめ、それなりに成功した商品群。ここだけ見れば、凡百のビジネス書とそう違わないと指摘する諸兄もおられようが、やっぱり違いのわかる「見せ方」。

演出で売れる商品について書いた本を、演出で売ろうとして何が悪い。

本の中で言ってることのを、本という商品たる自分自身で実証する姿。

タイトルも流行中の「なぜ、」型。

しかしブームは足も速い。

来年の今頃は賞味期限切れ。

それでも今、

読者の役に立つ。

ストレス・フリーで楽しく読めるという、

ニッチな市場開拓、

そういう実証実験でもあるわけかい。

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2007年9月 1日 (土)

豪華絢爛花魁の骨格超合金製みたいな

ポンパだとか、わたくし率イン歯ーとか、純文学っても明らかに前衛的な作品を立て続けに読んだ直後ということもあって、まこと読みやすし。余計な緊張感無く安心して楽しめるのが凄く嬉しいのだ。

こういう落ち着いた雰囲気の作品にも、作者さんにも、直木賞受賞というブランド力のプッシュが無いとなかなか出会う機会が無い。だけど、ひとたび読んでみると、確かに面白くて、日本の伝統文化を今に伝える興味深さと楽しさが同居していて、痛快カタルシスもあって、読んでよかったなあとつくづく感じてしまうのだ。

吉原手引草 Book 吉原手引草

著者:松井 今朝子
販売元:幻冬舎
Amazon.co.jpで詳細を確認する

こういう経験を通じても、あ、やっぱり文学賞って書き手と読者の出会いの場を作ってくれてる有難い催しなんだと、ごくごく当たり前のことを、ごくごく当たり前のように再認識させてくれる。

で、その選考ってのもよく話題に上る。その選考の結果、どういう作品で文芸マーケットを盛り上げてゆくか方向性をある程度決める結果となってしまう。選考委員の意図ありとなしに関わらず、市場の盛衰が左右されるというのも、恐ろしいことかもしれない。

さて、本作では、終盤ぎりぎりまで、吉原の花形花魁失踪の顛末が見えて来ずに最後の最後で大どんでん返しとなる。終盤はあれよあれよと阿鼻叫喚の種明かしとなるが、対照的に中盤まではなんとものんびりしたノリ。畠中恵「まんまこと」もかくやと。普通ならダルいとか感じそうなものだが、吉原文化の薀蓄満載、幇間だ遣り手だ、花魁は言うに及ばず、そして御大尽の生態まで、なんだかんだと興味を持続したまま読み進むことができる。ここらへんは、書き手の筆の力に、してやられたりというところだ。

「ありんす」は知ってたけど吉原独特の言い回しと用語が炸裂で、Yahoo辞書と首っ引き。「漢字力」もついて、クイズ番組で流行中の常識力テスト程度なら任せとけ状態。

ん、そういえば大昔、はとバスのツアーで松葉屋の花魁ショーを見たような記憶が、、、。

こうして江戸時代の吉原文化を纏ってはいるのだが、服を脱がせば、そこにあるのは要するに最近売れ筋のミステリー系の骨格であるような。人間の皮膚を被せた超合金骨格のターミネーターみたいな存在感で、伝統的な作風ではないらしいところが、なんだかすごい。

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