米国西海岸に渡り、ミューズ・アソシエイツを創業して10年。そのことを梅田氏が話すと、現地の人は微笑んで握手を求めて来たという。ニッポンだと、それがなにか、になっちゃうんだろうけど。あちらでは理解という空気が起業環境として機能している。本当に何でも10年頑張るのは大変。続ける秘訣は、それが好きであることだという。だから失敗しても成功しても、また起業するのだと。
『長めのあとがき』だけ最新の執筆で、あとは旧聞、いわば記事のアーカイブ。歴史、というのはそれなりに他のソースから聞き及んでいると思うので、最新の部分だけ目を通した。その文中でも、グーグルの奇跡、その存在感の大きさを感じさせられた。
シリコン・バレーでの成功とは。
グーグルのように株式公開して巨大化する道もあるかと思えば、マイクロソフトやらに買われる、そういう成功のスタイルも今はアリだとする。売らなきゃ、力づくで潰すぞ、なんて言われちゃうんだろう。グーグルとて、第二のグーグルの誕生を許さず、有望と見たらYouTubeみたいに速攻で買ってしまうに違いない。
会社が大きくなるにつれ、どんどん上位のプロの経営者にバトンタッチしてゆくのがあちらでは普通のカルチャーだから、会社そのものに思い入れはあまり無いのだろう。会社は商材だ。というより、子牛から育ててオークションで高く売る感触か。これがニッポンだと、拘るわな。会社は自分の子供みたいなもんかもしらん。そういえば、マイクロソフトから買収を打診されて断って名を馳せた国産SIerの社長さんもおられた。
さて、同時期の出版となった対談集では、第二世代IT社長の当たり年と同じ誕生年、しかしこちらは天才小説家、異色の対談だ。
梅田氏45歳、平野啓一郎氏30歳。当初、インフォテリア社の社長さん(平野洋一郎氏)と誤解してて、なんじゃXML談議かいなと敬遠してたのだが、読んでみれば異文化コミュニケーション。しかし小説家とて若きネット世代、技術的な話が通じないなんてことは無い。
こういう組み合わせは他ではあり得ない。お互いに非日常的なインスピレーションを受けて、他では聞けない話を語り始める。四方山話に魂宿る。
特にブログのくだりが興味深い。
平野氏は『読まれない』ブログの存在価値を疑う。梅田氏は、日常は人間関係を壊さないために語れない本音を書く、逃げ道のような空間と考え、それは2chのような毒を有する世界に通じると考えているようだ。だから匿名だと。そしてブログを5種類に分類する。
まあ、しかし、6番目に『その他』というのが必要だったかも。文を作る練習と思って続けてるやつもいるし、そのうち読んでくれると、売れない作家みたいなモチベーションでやってる人もいる。トラックバックもコメントも全然つかないけど、本気で書いていることは、文から伝わって来る。何かのきっかけで『祭り』になって、そして安定して読まれるようになるのかもしれない。
ちなみにこのブログは『宣伝用』、とすれば7番目も必要だ。
梅田氏は海外出張中も、自分のブログが炎上してないか気になって毎日チェックするという。だけど、読むのはトップクラスの情報を発信するものだけ、加えて知り合いのもの少数。皆と同じ。しかし前作『ウェブ進化論』の意見およそ1万件は目を通したとのこと。これはトラックバックされた記事という意味だと思うが、そこまで読者の声を聴こうという姿勢には驚かされる。誠意ととるべきところ、自分には品質管理と見える。