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2006年9月

2006年9月27日 (水)

99・9%は仮説:科学史・科学哲学・バカの壁

かつて通ったキャンパスには、科学史・科学哲学、という学科があった。当時、ぎんぎんにサイエンス指向の青いわたし、ブルーバックスかぶれで、文系の香りの境界領域には全然興味をおぼえなかった。面白いのにね。若さゆえの、視野狭窄。

科学は哲学。それが実感されるのは、ちょっとおやじ入った頃でしたよ、なんてんじゃあ、いささか晩生過ぎだわな。

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 Book 99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方

著者:竹内 薫
販売元:光文社
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この本の冒頭、飛行機がなぜ飛ぶのか、実はよくわかっていない、という驚愕の事実。そうさな。あんな巨大な金属の塊が空飛ぶわきゃない。前からオカシいと思っていた。だから窓際の席は避けるようにしている。離着陸時は眼をつぶって耳をふさいでいる。というか、なるべく新幹線にしている。そういう諸兄も中にはいらっしゃるでしょう。

昨日明らかだと思われた理論が今日反証され、危機に瀕する。科学理論は変る。民の世界観も変る。だから何でも懐疑的に見ろよ、そう囁く理性の声。じゃ、哲学だけ不変なのか。というより、科学の体系をすべて仮説として、反証しうるものと扱うこと。科学を哲学の枠組みで整理してとらえる、それがこの本に底流する主張と読んだ。

宗教だろうと、各教派で『原理主義』と呼ばれる方々を除けば、それぞれの時代の最新科学の知見が教義やその世界観に大きく影響を与える。だが、宗教が科学に大きな影響力をもった時代。教義と世界観を否定しかねない仮説は、口にすることすら難しい。宗教と科学のデッドロック状態。ともに進歩が止まる。

ブレイクスルーには破壊者が必要であった。破壊者は、宗教的に常識とされた仮説を疑ってかかり、対抗する仮説を立て、データによって実証し、既存の仮説に反証を示すことで勝利した。なんだか、科学じゃないけど、破壊者が必要なんてーのが、現代の各方面でもありがちな構図だわな。で、この本をビジネス書と勘違いして読み始めたわたし、なんだか、妙に考えるヒントをいただいたような、ふつふつと感謝の想いが今。

常識を信じるな。固定観念を疑え、捨てろ。養老先生の『バカの壁』と共通の提言。養老先生の大脳生理学、竹内さんの物理学。それにしても、宇宙論といい素粒子論といい、なんだか物理学のフロンティアは、民の日常生活からぶっ飛んで、凡人の直観から乖離しちゃって、もはや理解不能。いや、理解不能だからこそ、もっと知りたい、ちょっと自虐的な知的欲求だったりする。

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なぜ、あの会社は儲かるのか?:旬の四方山話で楽しく経営学と会計学、門前の小僧に

大学の授業、基礎的な知識を体系的に詰め込むコースだけではない。教官が四方山話をして、学生に興味を持たせるのが第一義、といわんばかりの授業も存在した。その授業で『釣られる』、いや、覚醒すべき、本来その方面の能力を持った学生は、これをきっかけに熱意をもって自発的に貪欲に勉強を始める。方面違いの人は、単位取得に必要十分、最小限の努力でOKですよと。

そういうそそられる専門の釣り針が沢山ぶら下がっているキャンパス、そういう学府が実在するならば、幸福なキャリアへの入口として、はたまた社会人学生が深堀りするテーマに出会う場として、それはそれは魅力的な環境だと思う。

本日読んだ、この本、経営学と会計学の釣り針のような。いや、アカデミズムということではなくて、むしろ実践。ビジネスを工夫して切り盛りする面白さ、マーケットの躍動感が伝わって来る。

なぜ、あの会社は儲かるのか? Book なぜ、あの会社は儲かるのか?

著者:山田 英夫,山根 節
販売元:日本経済新聞社
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終身雇用・会社は永劫不滅という時代から、会社は放っておけば潰れる・就社から就『職』でキャリアパスを作る時代へ。経営者のみならず、事業に従事するものすべからく経営の視点が必要。さらにはサバイバルの生命力も。起業家と予備軍各位にとっても、『トヨタ』だ『IBM』だと超優良エクセレント大カンパニーを扱う本はとりあえず『オラ関係ネシ』と感じても、この本の視線なら何か役に立ちそうな、トリビアのようないつか役立つヒントを発見できそうな、そんな感触で。

タイトルは大流行の『なぜ、』の『さおだけ屋』型。読みやすさも、お砂糖たっぷり、スイーツ系。だけど、内容が相応に充実してて、カスタマー満足度高し。増殖中の羊頭狗肉誇大タイトル種と一線を画す。だが、専門書というノリでもなく、楽しく最後近く(最後の最後は結構ホネだったり)まで読める。電車の中で体系的な知識をと期待するインテリ長距離通勤族、頭蓋骨太の諸兄には、お呼びで無い本かもしれない。

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2006年9月14日 (木)

ニュービジネス活眼塾:大前研一教祖の時代を超える御言葉アーカイブ

比較的新しいビジネス書をスキャンして発想の『素』を得ようと目論むも、2005年6月出版の本が1997年2月の講義録、今やMS社にも棄てられたWindows95全盛期の古典を含むとは。著者の大前先生曰く、手を加えないほうがいい、確信犯だそうです。ドッグイヤーのIT関連業界、フリードマンさんに至っては、「フラット化する世界」出版の一年後に増補改訂版を出す時代。まあ、確かに、今でもビジョナリーカンパニーとかドラッカー書がアマゾンのビジネス書ベスト100にランクインするぐらいだから、時代を超えた名著、というのは存在するのですが。

ニュービジネス活眼塾 アタッカーズ・ビジネススクール講義録 Book ニュービジネス活眼塾 アタッカーズ・ビジネススクール講義録

著者:大前 研一
販売元:プレジデント社
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1997年から2003年の講義録が時間軸上に並ぶ。最初の1/4を読んで疲れてしまったので、最後の2003年の章から逆行するように読みすすめた。2000年代から90年代に戻ってしばらくしてギブアップ。落ち着いて読むなら、貴重な格言が散りばめられているとわかるのだが、なにしろこちらは大量の情報を人間マイニングしたい状況なので恐縮ながら余裕がございません。

一つの発見は、直前に読んだ「私はこうして発想する」での章のタイトル、例えば、敵(相手)の立場で考える、など、本当に大前研一氏が長く実践される「考える姿勢」を整理した項目であったらしいこと。先に章立てを決めて、それぞれに旬の話題を割り振っていかれたのでしょうか。同じ作者の作品を読み進めてはじめてわかることもございます、私のやうな凡々煩悩人には。

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私はこうして発想する:大前研一氏なじみの寿司屋旬のネタ、もとい、時事ネタ6つ

煮詰まって、新しい発想を求めて、この本のタイトルに釣られて、思わず手に取った。読んで面白い6つのオムニバス、いつもの大前節で出汁をとった手前味噌風味、それなりにタイムリーで面白く読ませていただいた。が、読後にハタと。発想法って、あまり書いて無いじゃん。

私はこうして発想する Book 私はこうして発想する

著者:大前 研一
販売元:文藝春秋
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対中国問題、対南北朝鮮問題、それぞれ流石の分析が披露されている。だが、「歴史から教訓を引き出す」「敵の立場で読む」との章タイトルは、それぞれの内容をあまり代表してないようにも。「発想する」とのお題でくくろうとすると、そうなるのかなと。独立した講話6件として見るなら、それはそれは清々しい切れ味、いつもの迫力満点の論説になっているわけです。

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東京タワーのオカンとオトン :親孝行したくなりますよ

190万部超の大ベストセラー、いったいどんなことが書かれているのかと。

それぞれの人の数だけ個性的であるはずの生い立ち、その数多の話のひとつだろうぐらいに読み始めた。それにしては、なぜこれほど感情移入してしまうのか。共感、ということだ。それは、皆がとても大事にしている家族、その家族の間の情緒について、実に普遍的なことを書いているから、ということなのかもしれない。

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~ Book 東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

著者:リリー・フランキー
販売元:扶桑社
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自伝、という語り口で描く、母親の生涯、女の一代記。

実は最近、この小説の終盤とよく似た体験をした。オカンでなくてオトンだったが。大切な人を失いつつある時期の焦燥、その瞬間以降の強烈な喪失感。人間が変った、かもしれない自分。多くの読者は涙を流しっぱなしになるようだが、こちらは実体験が新鮮すぎて、ああ、この人もそうだったんだと、涙するというよりは、癒されてゆくような心地であった。

さっき見ていた『水10』ココリコミラクルタイプに出て来てた、あの謎のリリー・フランキーさんて、同姓同名の別の人ですよね、てか。

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2006年9月13日 (水)

社長のベンツは4ドア:中小企業経営者のアブラギッシュでブラックなネタが楽しい

会計学の入門書、なんて雰囲気を漂わせるベストセラー。最近よくあるタイトルばっかり刺激的なやつ、「サオダケ屋はなぜ」「千円札は」「見た目が9割」みたいな。まったく期待せずに読みはじめて、いい方向に裏切られた。

なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?誰も教えてくれなかった!裏会計学 Book なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?誰も教えてくれなかった!裏会計学

著者:小堺 桂悦郎
販売元:フォレスト出版
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くだけた言葉とレイアウト、眞鍋かをりさんのブログのタッチを思い出したと言えば怒られそうだが、ネタは会計学初歩の初歩、これを江戸小話の熊さんハっつぁんの掛け合いのように、面白おかしく話が進む。トリビアの泉のようなマニアックな薀蓄でもなく、すぐに使える知識というよりは誰でも知っている知識だが、実話とからめると、これはもう、立派なエンターテインメント。粉飾だ、架空決算だと、ブラックな話題もインサイダーとして語るアングルは新鮮そのもの。

バランスシートとか見たこともないけど起業には興味ある人とかには、入門書としていいのだろうが、大多数の人にとって、この本はニヤリとさせる、知的なお笑い本として楽しむことができるよなと思った次第で。

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2006年9月12日 (火)

1億稼ぐ検索キーワード:ネット商売は徹底的にやらんと勝てん

うちの超スモールビジネスでAdWords広告を使い始めるとき、キーワードの選択が不適切で、無駄に表示を繰返したあげく、『品質が悪い』と警告を受け、クリック単価7円から始めたものが600円まで高騰して、結局そのキーワードをあきらめたということがあった。素人がすぐに使いこなせるしろものでもなさそうだ。最近はOvertureも使いはじめて、自分のビジネスでのキーワード広告の可能性がやっと実感されかけてきている。失敗を重ねて、やっとエッチラオッチラと使えるようになってきた今だからこそ、この本の価値がよくわかる。

1億稼ぐ「検索キーワード」の見つけ方—儲けのネタが今すぐ見つかるネットマーケティング手法 Book 1億稼ぐ「検索キーワード」の見つけ方—儲けのネタが今すぐ見つかるネットマーケティング手法

著者:滝井 秀典
販売元:PHP研究所
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自分でホームページ作れよ、自分でキーワード広告を管理しろよ、というあたり、SOHO的な起業をする人達の事情というか気持ちをよくわかってらっしゃるなあと感じる。うちは物販じゃないから、とはいえ、トラフィック、クリック率、コンバージョン、どのパラメーターをとっても著者の示すそれぞれ1万、1%、10%のガイドラインより顕著に低いのは心配だ。こういう生々しい数字を具体的に出してくれることで、わたしのようにズボラな人にも『これじゃ駄目だ』と反省するきっかけができるというものだ。

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2006年9月11日 (月)

ランチェスター経営がわかる本:まず必要なのは弱者の戦略だったわけで

自分でも超スモールビジネスをやってて、小さかろうと維持が大変であることを知っているくせに、いつかはYahooやら楽天のようにと夢なんか見ちゃって、有名著者のビジネス書をかたっぱしから読みあさり、「小さいままじゃ駄目なんですよ」なんてメルマガであらぬ方向に釣られていって、まあ、わかりやすくてダメダメな自分ではあります。

だが、小さい状態でもとりあえず生き残ってゆかないことには、次の段階は来ない。足元を磐石にした上で、次のステップ、そういう、中小企業としての地道な起業と経営の戦略書。決してベンチャー的な多産多死型ではない。100人のうちの成功する1人以外、99人の側にまわるのは誰でもいやだ。この本には、慎重に起業してなんとかそれなりに高い確率で生存してゆけるよう、必要な心構えが示されている。

「ランチェスター経営」がわかる本―儲けのしくみ、教えます! Book 「ランチェスター経営」がわかる本―儲けのしくみ、教えます!

著者:竹田 陽一
販売元:フォレスト出版
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弱者の戦略を選択すると言ってしまうとカッチョワルだが、こちらを選択すべきであることが直感的によくわかる。俺はグローバルスタンダードな強者の戦略を採用するね、とか嘯いてソトズラを良くしておいて、水面下では「弱者の戦略」で泥臭くもしぶとく生き残ってゆきたいものであると考える今日この頃です。

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2006年9月10日 (日)

ハイコンセプト:第四の波、情報革命だけでは到底説明できない質的変化の正体を看破する

トフラー著『富の未来』では「非金銭的経済」としてモヤモヤ感たっぷりに説明された、情報革命では説明できない社会「活動」の存在感の拡大。かたや、フリードマン著『フラット化する世界』でも、2000年頃までに大きな変化が完了して今はその波及期とした上で、実はまだ大変革の入口にあるというような奥歯に物の挟まったような示唆。ともに明言こそしないが、ポスト『第三の波』時代、予期せぬ次なる大変革期に達してしまった時代認識。

トフラーが『第四の波』として説明するのを躊躇する大変化の状況を、この本では正面から『第四の波』としてまな板の上に載せる。

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代 Book ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

著者:ダニエル・ピンク
販売元:三笠書房
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この本を一言で表現するなら、『右脳シフト』。人間しか作り出せない価値、「ハイ・コンセプト」、「ハイ・タッチ」が大事。じゃなきゃ、BRICsにチーズは奪われる、そういう本。

人間を単純肉体労働から解放しようとする産業用ロボットの普及から20数年遅れて、ホワイトカラーの単純知的労働を、インターネットやアプリケーションソフトを通じて解放する、というよりは奪い去る。それもアッという間に。豊かな生活を維持してゆくには、コンピュータで置き換えられたり、BRICs等の安価な労働力にとってかわられない仕事にキャリアを置く必要がある。ここまでは、数多グローバリゼーション本が口を揃えて説くことではある。では、どのように。

フリードマン『フラット化する世界』改訂増補版では、教育の視点から提言を行った。また、地域密着、この選択肢は納得できるし、これで救われる読者も多いかもしれない。「ハイコンセプト」でいう、看護師のような高度の対人能力を必要とする仕事が、フリードマンでの「地域密着」の仕事に顕著にオーバーラップする。

だが、『私はSEO技術者をめざす』と子供の登場人物に言わせるように、機械のアルゴリズム相手に、もはや勝てないチェスみたいな例を持ち出してたりで、技術がからむ具体例は斜に構えて聞く必要もあるような。

一方、第三の波は情報革命、次なる第四の波は『知識』革命だという人もいる。だけど、知識は使ったり流通させるだけじゃ駄目で、知識を生産しないと豊かにならない段階に至ったと思う。フラット化社会では、知識もすぐに陳腐化する。発明しないと駄目。コンセプトを作れる人になりましょうと、この本でも説くわけで。

第四の波とは言わないが、エモーションの価値革命のようなことを言う人は、以前からいる。これだけ言っちゃうと、こいつ大丈夫か、ってな目で見られるだろうけど、ダニエル・ピンクさんのように、アウトソーシングやオフショアの危機感から連続的に丁寧に論を進めることで、違和感なく、ご高説を消化吸収できる。

この本のいいところは、右脳シフトを論ずるだけあって、ユーモアに溢れ、楽しく読めることだ。デザインの重要性を説いているが、確かに、bodumやDeLonghiの製品を買うとき使うときのようなワクワク感満足感に通じる魅力があって、無理なく最後まで飽きずに読めた。本も『第四の波』時代ではかくあるべきと、まあ、そこまで言っているわけでもなさそうだが。

さあ、トフラーさん、フリードマンさん、次作で第四の波について、どう調理する?

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2006年9月 7日 (木)

旅の極意、人生の極意:年収300万円時代のマジョリティにも手が届きそうな

ロンパリNY誰でも知ってる街の凡庸な紹介でなく、超マニアックな奴しか行かないような地の果ての話でもなく、興味を感じたらなんとか努力と工夫で行けそうな目的地を紹介してくれているのが嬉しい。

旅の極意、人生の極意 Book 旅の極意、人生の極意

著者:大前 研一
販売元:講談社
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『ロウワー』だろうと人生を楽しもうぜ、そういうメッセージにも聞こえてくるのは、『ロウワーミドル』を読んだ直後だから。自慢話を聞かされている気分になって来るのも、いつもどおり。東京12チャンネルの旅番組みたいな、急ぎで「さわり」だけ紹介するような、何食っても『おいしい~』としか言わないレポーターみたいな『薄さ』はそこにあるのだが、15個紹介してやるからどれでも選べよ、ってなことがこの本の目的だとすれば、そのミッションはきっちり達成されている。細部は自分で考えろってことのようですね、ここでも。

物書きの先生方の旅行記としては、立花隆氏の『思索紀行』『エーゲ』を思い出す。特にエーゲが顕著だったが、写真満載で、景色を見て脳内旅行で楽しめる。それは『旅の極意』も同じだが、写真のクオリティがこれだとちょっとあんまりでご不満の諸兄も少なくなかろう。表紙だけが超美麗写真で。あと、ご趣味も違うようで、立花隆氏はかなりディープな歴史をたどる旅が印象的なんだけど、大前研一さんは、リゾート、それも圧倒的にゴージャスなやつが大好き。このテイストは、あ、大橋巨泉氏に通じるところがあるね、なんて言ったら怒られちゃいそうですが。

旅行案内としては、大きな綺麗な写真を大量に使って、ほとんどマニアックなレベルまで細部を紹介する雑誌を書店でよくみかける。単に観光地紹介なら、絶対そっちのほうが情報量も質もいい。American Expressでも、『Expression』っていう、金持ちツーリスト用の情報をたっぷり含んだ無料雑誌を定期的に会員に送って来るし。となれば『旅の極意』は、やっぱり大前研一氏の人生が垣間見えるところに価値があるということになりそうだ。

到底自分では実現できないゴージャズな経験。とはいえ、スーパーリッチの人生の楽しみ方には学びたい。真似をする必要は無くて、コストを徹底的にケチって、なんとか同じ場所に行って、同じ感動をする。食事は別に☆☆☆レストランである必要もなく、その地元の食材を堪能する方針で、コストパフォーマンスを最適化する。これなら、あなたも私も皆さんも80%のマジョリティーの人達が人生を楽しめるプラン、ニューラグジュアリーな旅が出来上るというものだ。

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原典ユダの福音書:専門書であって興味深いが娯楽書ではないようで

救済は既に決定された人間だけ。その残酷な宇宙観がたとえ真実に近いものだったとしても、これでは人々の心は救済されない。現世に生きる人々の心の平安、それが宗教の基本的な使命と考えるのであれば、知って不幸になる事実など告知しなくて結構、帰依して不幸になる宗教にわざわざ改宗などしませんよ。「原典ユダの福音書」を読んだ直後の率直な感想。

原典 ユダの福音書 Book 原典 ユダの福音書

販売元:日経ナショナルジオグラフィック社
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2世紀頃に存在したとされる異端グノーシス派のありかたは、ダヴィンチコードつながりで興味をもっていて、そこにセンセーショナルな「ユダの福音書」発見の報。キリスト教史、考古学としてのチャレンジ、そういう視点で見るとエキサイティングだ。だが、グノーシス派の教義に真正面から取り組むこの本は、教義そのものの複雑さ難解さもあって、読み進めるのが私には大変であった。予備知識不足、プラス、そこまで厳密に知りたいとは思ってない、という私の事情のなせるわざ、なのだけれども。

史実がどうであれ、もともと世界観が違えば、会話の解釈は異なる。喩えを多用して抽象的に示唆することが多かったのであればなおさら。当時のキリストの1つの説話を皆で同時に聞いていたとしても、十二使徒それぞれ、そしてユダとで、意味、脳内風景が全く異なった可能性がある。加えて、時間経過で記憶の曖昧化。語り継ぐうち書き写すうちの、誤りと改竄。恣意的選択と弾圧。

史実は一つ、解釈は複数、いまはもうどれと言えません。そういうありがちな結論も玉虫色で大人の選択なのかもしれない。

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2006年9月 6日 (水)

世界反米ジョーク集:ユーモアの背景を薀蓄として楽しむ

世界の日本人ジョーク集」という読めばおそらく自虐的に楽しめるベストセラー新刊書を借りて読む前に、前作にあたる「世界反米ジョーク集」に目を通すことにした。海外の新聞等各種メディアで「米国をこきおろす」ジョークとして紹介されたものを羅列するコンピレーション系の本だろうと思っていたら、全然違う。

世界反米ジョーク集 Book 世界反米ジョーク集

著者:早坂 隆
販売元:中央公論新社
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喩えて言うなら、松尾芭蕉の俳句、その名作の一句について、背後の景観、心情、文化的背景などなどを延々と解説する、高校の国語の授業のような。その俳句をジョークに置き換えたような。

最近になって米国が孤立しがちの事情を詳しく説明し、その合間に、あたかも「ここで一句」という感じで。ジョークがポエムなわけです。国際情勢を自分が正しく理解できているか再確認という効果があります。ゲラゲラ笑える効能は無いようです。

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ロウアーミドルの衝撃:日本型『ネクストマーケット』で貧乏人から儲けてあなたも自分だけアッパーへ

新しいビジネスのアイデアを機関銃のように次々に生み出す。それがイマ風の起業家像。

ならば自分もと、ヒントを求めてかたっぱしから新刊のビジネス書に目を通しても、そこには具体的なネタなんか書いてあるわけがない。有望なアイデアなら自分で真っ先に始めるわけだし、少なくとも相応の金で売ることを考える。本から期待すべきは、一段メタな情報、発想法の類だ。

ロウアーミドルの衝撃 Book ロウアーミドルの衝撃

著者:大前 研一
販売元:講談社
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この本でも、崩壊して下流化するマスにビジネスチャンスがあるよ、そう教える。だけど、どういう製品やサービスという提案があるわけでない。いくつかの成功例と、考える戦略のようなものが示される。

貧乏な層を狙っても儲かるよ、というのは『ネクストマーケット』と同じ方向性ではある。だが、貧困層が中流化する薔薇色プロセスのBRICsと違って、わが国の場合は没落してゆくプロセスで生まれる市場の話だから、聞くに悲しい論調。貧乏だけどブランド好き、これはインドでも日本でも。で、ロウワーだろうと、もの言う国民、ノイジー・マジョリティたれ、ここまでは納得した。

そしてそのうち、大前研一氏独特の我田引水、鼻持ちならない自慢話が始まる。日本一の講師の講義をブロードバンドで流せば他の教師は不要とのたまう。トップクラスの学童しか話題にしません、ということでしょうか。学習に問題のある子は、解決に個別の対応が必要ですね。

また、道州制の提言では、首都圏の納税者が払う税金を地方のノイジー・マイノリティに横流しする中央政界の構図を破壊するという意味で興味深い。兵糧攻め。だけど、議会の無いコミュニティ、ですか。サイズ的に『湘南市』を想像して読むと、色々な陳情があって、何の牽制の仕組みも無く、リーダーと取り巻きが独断的に裁定する。効率的システムというより、新たな利権メカニズム、腐敗の温床のように思えます。

アイデアの機関銃、だけど細かいことは読者が考えてね。そう了解して読むなら、確かにとても面白い。グランドデザインレベルでのこういうユニークな発想は、まさに大前研一氏ならではかと。

ポスト小泉への提言など、旬のテーマを含むがゆえに、この本の賞味期限は1年ぐらいか。あるいはそういう設計寿命。フリードマン「フラット化する世界」みたいにまず来年「改訂増補版」を出版し、2008年には「Ver.2008」なんていう、Windowsやら弥生やらすら彷彿とさせるシリーズ化作戦も儲かりそうで。メリットが提供者側にあり、生活者たる読者側にはいささか迷惑な話かもしらん。

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